一人ひとりの「読みやすい」をめざして
弱視者をめぐる教科書の現状
視覚障がい者の7~8割以上を、「弱視」または「ロービジョン」と呼ばれる状態の人々が占めています。弱視とは、見えにくさのために、生活においてさまざまな制限や不自由を強いられる状態を指します。
弱視の子どもへは、通常の教科書だけでなく拡大教科書という文字の大きな教科書が用いられています。また、ルーペなどの見やすくするための補助具が使われています。一言で弱視と言っても、個々人の状況はさまざまです。視力のみが低い子や、視野が狭い子、視野の中心部が見えにくい子など、見え方や見えやすい条件は個人差が大変大きく、1種類の教科書で一律に対応することは困難なのです。そうした中、2008年6月に、通称「教科書バリアフリー法」と呼ばれる法律が成立しました。法律により、拡大教科書の発行が教科書出版社の努力義務となるなど、障がいのある子どもに対する教育環境整備は、一歩一歩改善をみせています。
「読みやすい」を科学する
大きめの文字の方が読みやすい、白黒を反転させた黒地に白文字の方が読みやすい人がいるなど、これまでに経験的、実験的に蓄積されてきた情報を、一人ひとりの見え方に合わせて活用するための取り組みも進んできました。例えば、読書に必要な文字サイズを調べる「読書チャート(MNREAD-J,Jk)」などを用いて、個々人にとって適切な文字サイズ、何とかぎりぎり読書ができる文字サイズ、各文字サイズによる読書速度など、読書に関する客観的な指標を求め、それをもとに、一人ひとりの見え方に対応する実践や研究が進められています。
さらに、障がいのある子どもの教育だけでなく、中途障がいや老化にともなう視機能低下への対応など、より多くの人の「こうしたい・こうできたら」に答えていくために、研究が進められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。