「アルプス一万尺」が教えてくれること
「身体」を通して学ぶ大切さ
昨今「キレる子どもたち」がニュースでも多く取り上げられています。また教育の現場からは、落ち着いて授業を受けられない子が増えた、クラスに馴染めない子が増えた、といった声も聞かれます。
そのような問題を抱えるクラスで、授業に「アルプス一万尺」などの簡単な手遊びや集団遊び、リズム運動を取り入れてみたところ、3カ月ほどで大きな改善が見られたケースがありました。クラスになかなか溶け込めなかった子どもは次第に仲間と触れ合うようになり、そのほかの子どもたちにも積極的に仲間を受け入れていく姿勢が身についてきたというのです。果たして子どもたちは手遊びやリズム運動から、何をどのように学んだのでしょう。
他人があくびをしているのを見て、つられてあくびをしてしまったことはありませんか? 人間の身体は、物質的には、一人ひとり別個のものです。しかし、つられてあくびをする行為からもわかる通り、人間の身体は、側にいる人間や他人の身体と無関係に存在するものではありません。小さな子どもにとって、遊びの中で、集団の中で、体を動かし、言葉を発し、リズムを刻むという「身体」を通して学ぶ過程は、とても基礎的で重要なことです。子どもは身体を通して他人と自分との距離や関係を身につけ、自我を形成していきます。昨今の「キレる子ども」などの問題は、幼稚園あるいはそれ以前の段階で、「身体」で学ぶことの不十分さが影響していると考えることもできるでしょう。
子どもから、先生から学ぼう
仲間と一緒に体を動かし、声を出し、リズムを刻むなど、遊びや朗読、合唱などを通して、子どもたちが成長を遂げることを、熟練した現場の先生たちは、経験上それをよく知っています。「教育学」では、そういった現場の知見を元に、子どもたちが何をどのように学んでいくのかのメカニズムを見つけることが求められます。また、そこで得られた知見を現場にフィードバックしていくことも重要です。子どもたちや先生たちから学びながら、研究は進められていくのです。
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先生情報 / 大学情報
宮城教育大学 大学院教育学研究科 高度教職実践専攻 教授 田端 健人 先生
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