人々の学びと文化をつなぎ、未来に向けた新しい教育を創る
人間の尊厳と平和のための教育
今日、未来に向けた課題として、「人間の尊厳と平和のための教育」が挙げられます。多様化する社会では、環境問題や貧困や飢餓、紛争、自然災害、多文化共生など地球規模の課題が山積しており、人々の安心安全な暮らしをいかに守るかが課題となっています。教育は、人々が、学びを通じて知識や技術を身につけるとともに、新たな価値観や多様性への理解を深めるのを促し、教育文化交流を通じて人々のつながりを生み出します。
比較教育学・国際教育学とユネスコの取り組み
国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、2020年に持続可能な開発のための教育(ESD)に関する国際会議を開き、「ベルリン宣言」を発表しました。また2021年にはユネスコと国際委員会が「教育の未来」という題名のレポートを発表しています。この新しいビジョンには、持続可能な開発目標(SDGs)の「目標4:教育」にある「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」ということが含まれています。さらにユネスコは、1974年に出された「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告」の改訂作業を行っています。冷戦時代に平和な世界の実現をめざして作られた勧告を、現在の世界情勢をふまえて見直す作業を通じ、相互理解や協力が平和のためにいかに大切かが再認識されています。
国際連携と新しい教育の可能性
また、新しい教育のあり方として、学習者の主体的で創造的な学びをどのように想像するかが課題となっています。オンラインを使った教育や多様性を重視する教育もその一つです。政治的・経済的な状況は国によって違うため、各国の政策や実践の方法は異なりますが、近年では国の枠組みを超えた国際連携やネットワークによるトランスナショナル教育と呼ばれる新たな教育形態が登場しています。教育を通じた人々の学びと文化をつなぐ「知のプラットフォーム」の創成は、持続可能な未来を構築する大切な礎です。
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先生情報 / 大学情報
上智大学 総合人間科学部 教育学科 教授 杉村 美紀 先生
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