「歴史的思考力」を身につけよう!

「歴史的思考力」を身につけよう!

テディベアと19世紀のドイツ

有名なクマのぬいぐるみ「テディベア」は19世紀のドイツで、マルガレーテ・シュタイフという女性が起業した工場で制作され、20世紀初頭にアメリカにわたりました。このテディベアから当時のドイツについて考えてみましょう。
テディベアの歴史からは、19世紀に「子ども」という概念が遊びや教育とに結びついたことがわかります。また、マルガレーテが子どもの頃の病気のせいで足が不自由だったことから、乳幼児への医療が一定の水準に達していたこと、障がいがあっても女性が仕事を持って独立できる社会だったことが推測できます。ドイツ製品がアメリカで多く売れたことは、経済のグローバル化が進んでいたこともわかります。このように考えると、教科書の中の世界だった19世紀のドイツに、生き生きとした現実味が感じられるでしょう。

「クレシーの戦い」を見る

もう1つ、歴史へのアプローチを紹介しましょう。14世紀から15世紀に西ヨーロッパで起こった「百年戦争」についてです。イングランド王国軍とフランス王国軍の戦いで、最終的にはフランスが勝利しました。その初期の戦闘の1つに「クレシーの戦い」があります。数の上では優勢だったフランス軍は、イングランド王国軍に大敗を喫します。この戦いについて、教科書の多くはイングランド軍の主力が熟練の長弓兵だったことを紹介しています。では、なぜ「長弓」を使うと勝利できるのでしょうか? また、なぜ約100年後には逆転してフランス軍が勝てたのでしょうか? お互いの武器に着目して、ぜひ考えてみてください。

歴史上の必然を問い、当時を体感する

歴史の勉強で大切なのは、こうした史実がなぜ起きたのか、どうして結末がそうなったのかを、史料に基づいて論理的に思考すること、すなわち「歴史的思考力」を養いながら、歴史の必然にアプローチし、歴史の可能性を想像することです。決して、史実を暗記することが重要なのではありません。歴史とは、過去を生き生きと体感し、思考力を磨くことのできる面白い学問なのです。

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先生情報 / 大学情報

東京女子大学 現代教養学部 人文学科 歴史文化専攻 准教授 柳原 伸洋 先生

東京女子大学 現代教養学部 人文学科 歴史文化専攻 准教授 柳原 伸洋 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

歴史学、歴史教育学

先生が目指すSDGs

メッセージ

過去の出来事を暗記することが歴史の勉強だと思っているかもしれません。でも、歴史教育は大きく進化しています。現在では、「歴史的思考力」、つまり史料(=証拠)を使って、歴史的事実の原因を論理的に思考していく力をつけることが、歴史教育として重要視されています。
また、私たちの日常生活や身の回りの物のすべてには、それぞれに固有の歴史があります。それを探ることは、単なるネタやうんちくを超えて、私たちの世界を豊かにしてくれるでしょう。ぜひ、歴史を学ぶことの意味と面白さを感じてほしいと思います。

先生への質問

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東京女子大学に関心を持ったあなたは

東京女子大学現代教養学部は、全学的に国際性、女性の視点、実践的学びを重視した教育を展開しています。100周年を迎えた2018年に「国際英語学科」「心理・コミュニケーション学科」を新設。また、国際社会学科に新たに「コミュニティ構想専攻」を設置しました。キリスト教精神に基づくリベラル・アーツ教育で自ら考え、知識や能力を行動へとつなげ、社会に出てからも学び続け、さまざまな問題を解決する力を身につけたリーディングウーマンを育成します。