ロボットには難しい? 液体をこぼさずに運ぶミッションの達成には
ロボットが液体を運ぶ
水を入れたコップをお盆に載せて運ぶとき、こぼしてしまわないかドキドキしますね。途中に段差や曲がり角があったらなおさらです。これをロボットにやらせるには、非常に高度なバランスを取る仕組みが必要です。
まず走行では、どんな経路も通れて、段差も乗り越えられる足回りの機構を考えます。経路には曲がり角、狭い箇所、障害物などの悪条件も想定しなければなりません。そのため、前後だけでなく左右にも自由に動くよう、通常の車輪ではなく特殊な構造を持った車輪を使います。メカナムホイールという車輪は、車輪上に45度の角度でローラーが取り付けられており、通常の直進移動のほかに、45度の方向にも移動できます。4輪にこれを取り付けると、それぞれの回転方向の組み合わせと速度の調整で、全方向の移動が可能となります。
水をこぼさない運搬の機構
これでスムーズな移動はクリアできますが、それでも段差や曲がり角ではお盆の水がこぼれる可能性があります。そこで、お盆を支える部分には、フライトシミュレーターなどに使われるパラレルリンク機能を利用します。6本の棒がお盆を支え、棒の根元についたモーターでそれぞれが自由に動く機構です。機構を制御するコンピュータには、運ぶ対象物の振動の性質の中でも、運搬時に一番多く見られる振動のパターンを採用し、モデル化して組み込みます。これにより、走行時の液体の動きを打ち消すようにお盆の動きを追随させ、液体を揺らさないように運ぶことができるのです。
将来ロボットが給仕をするには
これが実用化されれば、ロボットが食事を運ぶなどの給仕をしてくれることも可能になるでしょう。しかし、食事は通常、料理の皿や椀、飲み物というように、複数のものを同時に運びます。運搬物が複数あるとそれぞれの固有の振動数が異なりますが、お盆は一つの動きしかできません。ロボットが人間のように一そろいの食事を一度に運ぶには、まだクリアすべき課題が残っているのです。
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先生情報 / 大学情報
島根大学 総合理工学部 機械・電気電子工学科 准教授 濱口 雅史 先生
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