「メタマテリアル」で世界最強の磁⽯を作れ!
メタマテリアルとは
原子の並び方(結晶構造)は、元素によって決まっています。例えば鉄は体心立方格子、ニッケルや金銀銅は面心立方格子、コバルトは六方最密構造になります。また、混ざり合わない元素の組み合わせというものも存在します。人類はこれらの元素を、鉱石などから溶かして分離して、さまざまな製品に利用してきました。
近年、結晶構造を人工的に変えたり、本来混ざり合わないはずの原子同士を混ぜたりする技術が開発されてきました。こうして作られた新しい物質は「メタマテリアル」と呼ばれます。
人工的に結晶構造を変える
メタマテリアルの一つに、鉄とコバルトの合金「FeCo」があります。FeCoが強い磁力をもつことは昔から知られていましたが、保磁力(磁力を長時間保つ能力)が弱すぎて、実用的な永久磁石にはなりませんでした。
普通のFeCoの結晶構造は体心立方格子です。しかし最近の理論計算で、これを普通にはとりえない体心正方格子に変えると、強力な永久磁石になると予測されました。そこで、これまでの溶かして固める方法とは違う「気相成長法」を用いて、FeCoを気体から一気に固体化することで、体心正方格子のFeCoが薄膜で実現されました。現在は薄膜を超えたバルク製造の研究が進められています。
磁石が変われば社会が変わる
現在の世界最強はネオジム磁石ですが、レアアース等の材料調達や耐熱性に課題があります。それに対しメタマテリアルのFeCoは、ネオジム磁石の倍の磁力をもち、熱にも強いものです。
一般的に電力と動力を変換するには磁石を用います。その変換機器はモーターと呼ばれ、エアコンや電気自動車、発電所などの心臓部です。もしモーター内の磁石を2倍強くすれば、パワーや発電性能が原理的には2倍になりますので、省エネにつながります。持続可能な社会のために、メタマテリアルのFeCoに期待が寄せられています。
物質科学、メタマテリアルの世界には、ほかにも透明マントや錬金術など、漫画や魔法のようなことを実現できる可能性があります。
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先生情報 / 大学情報
秋田大学 総合環境理工学部 環境数物科学科 准教授 長谷川 崇 先生
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