カフェインの正体を見せてくれる有機化学の分析法

カフェインの正体を見せてくれる有機化学の分析法

コーヒーは茶色、ではカフェインは何色?

コーヒー豆は茶色、インスタントコーヒーの粉も同じく茶色です。それなら、その主要成分であるカフェインも茶色なのでしょうか。カフェインそのものの色を調べるちょっとした実験をやってみましょう。
まずコーヒーを煮出します。といってもただコーヒーをいれるのではなく、フラスコに入れて徹底的に煮込むのです。途中でさまざまな不純物のカスが出るのでフィルターで濾過します。ここまでで出来るのがカフェインも溶けている溶液で、ここから有機化学の知識を使って溶液からカフェインだけを取り出します。
カフェインは有機物なので、熱いお湯にも溶けますが有機溶媒にも溶けます。では、お湯と有機溶媒のどちらの方にカフェインはよく溶けるのでしょうか。有機物は有機溶媒の方によく溶けます。そのためジクロロメタンのような有機溶媒をカフェイン溶液の中に入れ、振り混ぜると、お湯の中に溶け込んでいたカフェインが、ジクロロメタンの方に移ってきます。

昇華して純化したカフェインの結晶の色は

コーヒーを煮出し、さらに有機溶媒であるジクロロメタンを混ぜることによって、カフェインをジクロロメタンの中に集めることができました。こうしたやり方を化学では抽出法といいます。
ただし、この段階ではカフェインはまだ有機溶媒の中に溶けた状態で、結晶とはなっていません。そこで次にこの溶液を蒸発させます。すると結晶ができますが、この結晶には不純物が混ざっているので黄色がかっています。ここからが仕上げです。
この結晶をお皿に入れ、その上にもう一枚、別のお皿をかぶせて下から熱してみましょう。今度はカフェインだけが昇華していき、上にかぶせたお皿には真っ白できれいなカフェインの結晶だけがつきます。これが不純物のない純粋なカフェインの結晶です。すなわちカフェインという物質の本当の色は、実は真っ白というわけなのです。取り出したカフェインの純度は融点を測るとわかり、融点が一定なら純度はかなり高いと言えます。

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島根大学 総合理工学部 物質化学科 教授 西垣内 寛 先生

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メッセージ

高校で習う化学では「すでに何もかもがわかっていて、今さらこの学問に新しい発見などないのでは?」などと勘違いしがちです。わざわざ大学まで行って化学の何を勉強し研究するのか、と疑問を持つ人もいるかもしれません。しかし、それはとんでもない間違いなのです。実は化学の領域にはとてつもなく奥の深い世界が広がっていて、未だにわからないことの方が圧倒的に多いのです。そんな未知の世界が限りなく残っている化学に興味を持ってくれる人が一人でも増えることを期待しています。

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島根大学は、学術の中心として深く真理を探究し、専門の学芸を教授研究するとともに、教育・研究・医療及び社会貢献を通じて、自然と共生する豊かな社会の発展に努めています。とりわけ、世界的視野を持って、平和な国際社会の発展と社会進歩のために奉仕する人材を養成することを使命とします。この使命を実現するため、知と文化の拠点として培った伝統と精神を重んじ、「地域に根ざし、地域社会から世界に発信する個性輝く大学」を目指すとともに、学生・教職員の協同のもと、学生が育ち、学生とともに育つ大学づくりを推進しています。