複雑な仕組みの人工衛星を、上手に動かすには?
たくさんの「メンバー」で構成される人工衛星
地球や宇宙を観測するために打ち上げる人工衛星。その仕組みは大変複雑です。宇宙から地球の写真を撮影する場合を例にとって説明しましょう。まず、人工衛星は太陽や星の位置を観測して、自分のいる位置を正確に知る必要があります。次にロケットを噴射して軌道を変え、地球にカメラを向けます。さらに撮影して集まった情報を分析し、地上にデータを送ったり、新たな指令を受け取ったりする必要もあります。
これらの機能それぞれが、人工衛星を構成する「メンバー」なのです。逆に言うと、たくさんのメンバーが集まったものが、人工衛星という一つの形になっているのです。
独裁制が良いか、合議制が良いか?
人工衛星の「メンバー」は、どのように情報のやりとりをすれば効率が良いのでしょう。誰か一人のメンバーが独裁者として強いリーダーとなり、ほかのメンバーはその指示に従うのがいいか、それとも全員が対等の立場となり、合議制で情報を交換し合うのがいいか。一般的には小さな衛星なら独裁制、大きな衛星なら合議制が良いと思われますが、このような「複雑な機能(メンバー)を組みあわせて一つの仕事をさせる」ための優れたインターフェイスを研究するのが、航空宇宙システム工学という学問なのです。
システムとして全体を「統合」させる技術が重要
機能の一つひとつが完全なものだったとしても、それらをただつなげばすぐに問題なく動くというものではありません。また、動かなくてどこに問題があるのかを探る場合、再び機能をバラバラにして調べても、原因がつかめないことがあるのです。なぜなら、システムには「つなげたことで問題が生じてしまう」ケースがあるからです。
一つひとつの機能を高性能化させることは大切です。しかし、システムとして全体を「統合」させる高い技術が、21世紀の航空宇宙工学では、ますます重要視されるでしょう。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
東京都立大学 システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科 教授 佐原 宏典 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
航空宇宙システム工学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?