「重力波」の観測からブラックホールの謎を解き明かす!
ブラックホールの存在
宇宙には、ブラックホールという何でも吸い込む天体があります。目には見えませんが、その質量は小さいもので太陽の10倍、巨大なものは10億倍にも及びます。天の川銀河の中心部にあるたくさんの星の運動の様子から、中心部に太陽の400万倍の質量の超巨大ブラックホールが存在することがわかっています。
重力波を観測する
超巨大ブラックホールの成り立ちとして、最初は小さかったブラックホール同士が次々と衝突して合体し、成長するという説が有力です。この説を証明するために、ブラックホール同士が衝突する前に発生する「重力波」の観測が進められています。
重力波は、アインシュタインがその存在を予想して、その100年後に初めて地球上で検出されました。ブラックホールからの重力波を検出するためには、パルサーという周期的に点滅する天体を観測する方法を用います。パルサーの点滅周期は正確なので、もしパルサーと地球の間に重力波が通過すれば、点滅間隔が乱れると予測されます。しかし、その乱れは非常に微細であり、10ミリ秒ごとに点滅するパルサーの点滅のタイミングが1,000万分の1秒だけずれるという程度の乱れしかありません。また、超巨大ブラックホールの重力波の波長は非常に長く、10年に1回振動する程度です。
宇宙の起源の解明
国際的なチームの観測による、最長25年にわたるデータの蓄積と解析手法の確立を経て、2023年には「パルサー天体を用いた方法で重力波の証拠が得られた」と発表されました。これは、その統計的有意性はまだ検出とまでは言えないものの有力な証拠が見つかった、という結果です。重力波の検出は目前であり、ここ10年間で、重力波がどこから来たものかを解明することができるでしょう。
重力波はブラックホールの衝突だけでなく、宇宙の起源であるビッグバンやインフレーションでも多く放たれていることから、この研究が進めば宇宙の起源の謎の解明にもつながると期待されています。
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