宇宙ゴミ除去で期待される「導電性テザーシステム」とは?

宇宙ゴミ除去で期待される「導電性テザーシステム」とは?

導電性テザーシステムの研究開発

宇宙デブリ(宇宙ゴミ)を掃除するためのシステムの1つとして期待されているのが、「導電性テザーシステム」です。導電性テザーシステムとは、「テザー」と呼ばれる長い紐状の物体を衛星から展開し、電気を流して地球磁場との間のローレンツ力(荷電粒子が磁場中を運動するとき磁場により受ける力)を発生させて、軌道変更のための力を得ることをめざしたシステムです。テザーの先端で大型宇宙デブリを捕獲し、地球大気圏に投棄して宇宙デブリを除去することが考えられており、世界の宇宙開発研究機関や大学において、さまざまな計画・検討が進められています。

テザーの制御は容易ではない!

長いテザーの先端を宇宙デブリにランデブー(接近)させ捕獲することができれば、宇宙デブリ捕獲用の衛星をわざわざ宇宙デブリにランデブーさせて捕獲する必要がなくなり、展開するテザーが長くなればなるほど広い範囲の宇宙デブリを除去できることにつながります。しかし、テザーは紐のようなものなので、引っ張ることはできても、押すことはできません。また、地球を周回するシステムからテザーを展開すると、「重力」「遠心力」のほかに「コリオリ力(回転系の上で運動する物体が進行方向に対して受ける直角横向きの力)」が作用し、展開する速度方向と90°異なる方向に力が作用します。さらに、テザーは振り子や弦のように振動もします。このような性質を有するテザーにおいて展開速度を制御し先端を宇宙デブリにランデブーさせることは、導電性テザーシステムを宇宙デブリ除去システムとして実現する上で重要な課題の1つです。

実は制御しないで済むのがベストな制御

モノを動かすためには、駆動部・エネルギーが必要ですが、ベストな制御は実は制御しないでもモノが希望の動きをするような作りや状態にすることなのです。つまり、モノそのものに自然に備わった動きをできるだけうまく利用した制御方法を考えることが、駆動部・エネルギー削減のために重要なことなのです。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科 教授 小島 広久 先生

東京都立大学 システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科 教授 小島 広久 先生

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航空宇宙工学

メッセージ

「モノ」を思い通りに動かすためには、モノがどういうふうに動くかを想像できる素養、すなわち「力学」をよく知らなければなりません。そのためには、物理と数学が必要になります。また、実際にモノを制御するためには計算機が必要です。物理・数学・計算機を使って自動的に自分の思い通りにモノを動かせたときの楽しさを、ぜひとも味わってもらいたいと思います。

先生への質問

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