大規模宇宙輸送や小型衛星の編隊飛行を実現する小型ロケットエンジン
宇宙空間で姿勢や軌道を保つ・より遠くへ行く
人工衛星は、太陽の重力などにより揺さぶられ、軌道がずれてしまいます。もし、放送衛星の軌道がずれると、地上のアンテナの角度を頻繁に修正しなければならなくなってしまいます。そこで、人工衛星に小さなロケットエンジンを搭載し、それを噴射して姿勢を修正するのです。また、同じ軌道に留まるだけでなく、姿勢を保ったり宇宙航行したりする場合にも、小さなロケットエンジンが活躍しています。小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星に行き、サンプル収集のためにタッチダウンして、地球に帰還できるのも、小さなロケットエンジンの活躍によるものです。
力が弱くても大丈夫
ロケットエンジンは、推進剤(ロケット燃料)の燃焼によって推力を得る化学推進と、電気エネルギーを利用する電気推進に分かれます。打ち上げに使う大きなロケットエンジンは、重力に抗って大気圏を飛び出さなければならないため、推力が大きい化学推進に限られます。一方、宇宙空間で使用する衛星用の小さなロケットエンジンは無重力で使うために自重を支える必要がありません。そのため、推力が小さくとも燃費が良い電気推進も活躍することができるのです。
宇宙空間でロケット燃料(推進剤)を調達?
現在の宇宙機は、使用する全推進剤を予め搭載しますが、もし途中で補給できれば、打ち上げのコストを削減し、より長い航行が可能となります。現在、少なからぬ天体で水や炭素などが見つかっており、これを推進剤にすることが考えられています。例えば、MPDと呼ばれる電気推進ロケットに水を推進剤とする研究が行われています。MPDは、電気エネルギーで推進剤をプラズマと呼ばれる高温のガス状態にして、電磁力によりプラズマジェットを噴射し、推力とするロケットです。理論的には、水プラズマジェットは秒速20km以上まで加速することができ、燃費の良さと大推力を両立できると考えられています。将来のロケットや探査機は、途中の天体で水を補給しながら飛ぶようになるかもしれません。
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東京都立大学 システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科 准教授 各務 聡 先生
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