画像診断で、コンピュータは正しく病気を見つけられるのか?
MRIとCTの違いとは?
医療分野における画像診断技術は、目覚ましい進歩を遂げています。「MRI(磁気共鳴画像診断)」と「CT(コンピュータ断層撮影)」は似たような技術だと思われがちですが、原理が異なります。
MRIは被験者が動くと画像がブレてしまうため、数分間じっとしていなければなりません。内臓の動きを止めるのは難しいので、頭や腰、膝といった部位の撮影が得意です。またCTと比べて、得られる画像のコントラストが優れます。一方、CTは1秒未満でも撮影でき、MRIに比べて撮影時間を短くすることができます。また、MRIと同じく断面の撮影が可能なので小さな病変部や肋骨(ろっこつ)の陰に隠れてしまう場所も調べることができ、古くから行われているX線撮影より精度も高いと言えます。しかし低線量とはいえ放射線を使うため、MRIと違い被ばくするという問題もあります。
画像チェックをコンピュータがサポート
CTによる被験者1人当たりの画像量は数百枚にもなり、大量の画像をチェックする「読影」が医師の負担になっています。こうした背景を受けて進められているのが、コンピュータによる読影の補助です。
処理速度の向上により、ソフトウェアという形で実用化され、病変部と疑われる箇所のリストアップに利用されています。胸部は病変部の見分けが比較的容易なのに対して、腹部の腫瘍(しゅよう)の見分けは難しく、今後の課題となっています。
性能の向上だけでなく、性能の評価方法の確立も
現在、数社から診断補助のソフトウェアが販売されていますが、どの臓器や病気の診断を得意とするのか、またその精度や性能にはバラつきがあります。そこで医療用の人形(ファントム)内に模擬的な病巣を作り、これを正しく検出できるかといったテストが行われています。しかし現実の腫瘍は、モデル通りの形状になるとは限らず、周辺組織を巻き込んだ複雑な構造となることが多々あるので、ソフトウェアの性能の向上を図ると共に、それらの性能を正しく評価する方法も求められているのが現状です。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 健康福祉学部 放射線学科 教授 沼野 智一 先生
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