人間の姿勢や動作を分析することで、作業効率を上げる

人間の姿勢や動作を分析することで、作業効率を上げる

人間工学に基づく製品づくり

私たちは普段、携帯電話やスマートフォンを何気なく使っていますが、その大きさや形、ボタンやアイコンの配置などは、人が持ちやすく、操作しやすいように作られています。こうした「人間にとっての使いやすさ」を研究する学問が「人間工学」です。現在、何か新商品を開発するにあたっては、人間工学の考え方は欠かせないと言われています。ドアに付けるノブの高さから、ペンの太さまで、「使いやすい」とはどういうことかを分析、数値化し、理論化していくのが人間工学だと言ってもいいでしょう。

負担の少ない作業姿勢

人間工学が必要とされるのは、商品開発の現場ばかりではありません。工場で作業をする人や農作業に従事する人たちが、なるべく体に負担がかからないような作業姿勢とはどういうものかを考えるのも、人間工学の大きな役割です。工場では、同じ製品を大量生産しますから、作業者は同じ動作を何度も繰り返すことになります。また例えば家電製品では、なるべくネジなどが外から見えないような、見栄えの良いデザインが喜ばれますが、そうすると工場で組み立てる際にネジが締めにくく、作業員の負担が大きくなることもあり得ます。いずれも、負担の大きい作業を続けていれば、生産効率も落ちることになってしまいます。

経営と人間工学

工場ではどんどん機械化が進み、オートメーション化されている部分も多いですが、人の手でないとできない工程もまだまだたくさんあります。近年では、どんどん新しい商品を作り出すという流れが加速しており、その工程をすべてオートメーション化するには膨大なコストと手間がかかってしまうので、あえて人手でやるほうが効率がいい場合もあります。作業の効率化というのは、経営におけるもっとも大きな課題のひとつです。作業姿勢や動作という観点から経営を考える場合、そこに人間工学が大きな役割を果たすことになるのです。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 教授 瀬尾 明彦 先生

東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 教授 瀬尾 明彦 先生

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人間工学

メッセージ

人間がものを使うときの体の使い方は、じつに巧妙です。姿勢のとり方や力のかけ方が少し違うだけで、うまく操作できたりできなかったりします。その背景にあるのは、人間のたくさんの関節を構成している骨格や筋肉の仕組みの複雑さであり、その知識の集大成が解剖学や生理学です。さらに、そうした人体の複雑さを考慮して商品を作るとなると、商品の仕組みと人間の仕組みの調和をとることが必要になってきます。あなたが人間の仕組みに興味があって、ものを作ることにも興味があるなら、人間工学はとても面白い分野だと思います。

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。