プラズマを有効活用できれば、宇宙はもっと身近になる

プラズマを有効活用できれば、宇宙はもっと身近になる

宇宙輸送の現状とプラズマによる技術革新

現在、宇宙へ行く唯一の手段は燃料式ロケットですが、その値段が高いことが、宇宙を遠い場所にしています。また、宇宙船が地球へ帰還する際(大気圏突入)は、過酷な加熱に晒されるため、断熱材を使用しますが、その安全性や再利用性に課題が残ります。一方、気体は高温になると「物質の第4の状態」であるプラズマに変化し、電子が自由に動けるようになるため、電圧や磁場をかけると集団的にコントロールでき、電磁波で遠方からエネルギーを与えることもできます。このプラズマの性質をうまく使うと、従来の宇宙輸送の課題を打開できるかもしれません。

光の道を通って宇宙へ!

燃料とエンジンの代わりに、プラズマとレーザーを使うロケットが考えられています。地上から機体に向けてレーザーを照射し、虫メガネで太陽光を集めるように、機体が吸い込んだ大気に集光すると、大気がプラズマ化して一気に膨張し、その反力で推進力が得られます。機体は、レーザーによる光の道をエレベーターのように通って宇宙に向かいます。この方式は、燃料やエンジンが不要で、荷物を沢山搭載でき、安価で大量に宇宙へ物を運べます。しかし、初期投資であるレーザー基地の値段が高いため、如何にレーザーパワーを抑えて推進力を得るかが鍵となります。

電磁力をブレーキに使い大気圏突入!

惑星の大気圏に宇宙船が突入する際、その周囲の大気は圧縮され、超高温のプラズマになります。その際、磁石やコイルを用いて宇宙船の周りに磁場を展開すると、電磁力が発生し、高温プラズマを宇宙船から遠ざけることができます。さらに電磁力は、反作用により宇宙船を減速させます。あたかも、宇宙船の前に透明な磁場の盾を張ることで、パラシュートのようにゆっくり突入するわけです。この方式が実現すれば、大気圏突入時の加熱を耐えるのではなく、“避ける“ことができるので、宇宙船へのダメージが少なく、その安全性や再利用性を格段に向上できます。

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鳥取大学 工学部 機械物理系学科 教授 葛山 浩 先生

鳥取大学 工学部 機械物理系学科 教授 葛山 浩 先生

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航空宇宙工学、電磁流体力学

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メッセージ

得意な科目、苦手な科目というのは誰しもあると思います。ただ、苦手な科目でも、自分に合っていないと投げ出してしまうのではなく、まずはコツコツと一所懸命に取り組んでみてください。勉強に限らずですが、そうすると、だんだんと突破口が開けてきて、やりがいと喜びが見いだせ、いつしか自分の得意とするものになると思います。
航空宇宙は未知の難しいことだらけの分野ですが、未来を見据えた、世の中を変えるかもしれない技術革新が詰まっています。ぜひ志してもらい、未知にチャレンジし、解決していく喜びを味わいましょう!

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