悲しみに寄り添う「グリーフ・カウンセリング」

悲しみに寄り添う「グリーフ・カウンセリング」

悲しみに寄り添うカウンセリング

あなたは最近、思い切り泣いたことがありますか? 忍耐は美徳であるという国民性のせいでしょうか、日本人は、悲しみや怒りを表現するのが苦手だと言われます。でも、悲しい時に泣くのは当たり前のこと。それを無理に抑えてしまうと、心にも体にもよくないでしょう。
臨床心理学における「グリーフ・カウンセリング」とは、大事な人を失ってしまった人が抱える悲しみを肯定することで、傷ついた人を援助していくものです。まず悲しんでいる状況を認めて、悲しい気持ちを吐き出してもらい、それを第三者が肯定することで、悲しみを負った人が治癒力を取り戻し、再生する可能性が出てくるのです。「感情の吐き出し」というのは、実はとても大切なことなのです。

大事な人を失ってしまった場合に

子どもを亡くして悲しんでいる人に、周囲の人が励ますつもりで「あなたはまだ若いのだから、また子どもを産めばいいじゃない」などと言ってしまうケースがあります。言った人に悪意はまったくないのですが、これでは、当事者の心の中にあふれている悲しみは癒やされるどころか、行き場をなくしてさらに深まってしまいます。
犯罪被害によって家族を亡くした人などは、とてもショックで悲しいはずなのに、警察が来て家族に事情聴取をしたりして、次々と課題が降りかかり、遺族は悲しむ時間さえないのです。
臨床心理学では、このように抑えられてしまった感情をきちんと見極めて、対応していくことが望まれます。

芸術療法の有効性

グリーフ・カウンセリングの一つの方法として注目されているのが、芸術療法です。悲しみに深く傷ついている人は、自分を表現したい感情も抑えられてしまっていますが、表現をすることでそれを解放していくのです。絵が上手とか下手とか、技術の問題は関係ありません。気に入った絵柄を貼り合わせるコラージュでもいいのです。悲しみを背負わされた人が、自由に表現できるアプローチが注目されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京福祉大学 心理学部 心理学科 教授 鈴木 康明 先生

東京福祉大学 心理学部 心理学科 教授 鈴木 康明 先生

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臨床心理学

メッセージ

心理学は現象を大事に考える学問です。特にカウンセリングでは、クライエントの方との時間を大切にしています。私は今、大切な人をなくされた方など死別体験をした方へのかかわりから、死に焦点をあてた心理学について研究しています。死は誰にでも必ず起こる現象です。死と向き合いきちんと考えることで、生きることの何かが見えてくるのではないでしょうか。かけがえのない限られたいのち、それを心理学を通して一緒に学んでいきましょう。

東京福祉大学に関心を持ったあなたは

東京福祉大学は、アメリカの大学教育の良いところを取り入れ、暗記力よりも、柔軟な思考力や創造力、問題発見・解決能力の高い人材を輩出できる大学をめざし、2004年に開学しました。そのモデルとなっているのが、約380年の歴史を持つ名門ハーバード大学と、ニューヨークにある約180年の歴史を持つ名門フォーダム大学です。
勉強が苦手でも、一人も見捨てることなく丁寧に学生を育て、一人前の専門家として社会に送りだす。東京福祉大学の建学の精神、創立の理念には、そんなアメリカの大学の教育の姿勢が息づいています。