「ひきこもり」は、個人の問題ではなく、みんなで解決するもの!
カウンセリングでひきこもりを治すのは難しい?
ひきこもりの治療といえば、カウンセラーがクライエント(苦しみなどを訴える人)の心に寄り添い、その人の内面から治していく、というイメージが一般的かもしれません。しかし、ひきこもりの原因の多くは、働き口がみつからないといった悩みや、家庭の問題、人間関係の悪化など、その人を取り巻く環境にあります。そのため、カウンセリングを行うだけでは問題解決に至らないケースも多々あるのです。
「コミュニティ心理学」とは?
心理学の中に「コミュニティ心理学」という分野があります。心理学は一般的には個人の内面を研究する学問ですが、コミュニティ心理学では、個人の内面に加え、その個人を取り巻く環境も研究対象に含めます。例えば、ひきこもりの場合、カウンセリングに加え、ひきこもりの原因となっている環境にもアプローチし、問題解決をめざすのがコミュニティ心理学の基本的な考え方です。
そのため、臨床の現場では、クライエントの環境改善に向けてさまざまな試みが行われます。ひきこもりの原因が雇用の問題なら、カウンセラーが役所や職業安定所、商店街と連携し、地域の人々の協力を得て問題の解決をめざすこともあります。またクライエントの家族に協力を求め、最も身近な家庭環境から改善することも重要な手法の1つです。
ひきこもりは予防が大切
コミュニティ心理学には、環境改善のほかにも、「危機介入」という大きな柱があります。これは、クライエントの小さな変化を見逃さず、より深刻な問題を抱える前に早期に介入して危機を回避するという考え方です。ひきこもりの場合、年齢を重ねるほど解決が難しくなるのが一般的です。さらに、家族の誰かがひきこもりになると、ほかの家族も世間の目などを気にして地域社会からひきこもりやすくなるという悪循環に陥るケースもあります。それを防ぐためにも、コミュニティ心理学では、問題が大きくなる前に対処する予防的な措置を重視しています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東京未来大学 こども心理学部 こども心理学科 教授 須田 誠 先生
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