イメージを用いるカウンセリングの可能性
心を伝えるのは言葉だけではない
カウンセリングには「悩みを話す」という印象があると思います。しかし、カウンセリングには話すだけでなく、夢や絵画といった「イメージ」を用いて、心にアプローチする方法もあります。人には「意識できて、言葉で伝えられること」もあれば、「意識できず、言葉で言い表せないこと」もあります。イメージはこのうち、「意識できず(無意識)、言葉で言い表せないこと」を伝える方法として有効なのです。
イメージから新しい生き方のヒントを見つける
具体的なイメージの用い方を紹介しましょう。悩んでいる人の多くは、問題解決に向けて考えられることはやり尽くしています。そのためえ、カウンセラーも新たな解決方法を提案できることはあまりありません。そのような時に「夢」を用いるのです。
例えば、あまりにも真面目に考えるために物事がうまくいかず、悩んでいる人が、「子どもになって、天真爛漫に振舞い、開放的になる」という夢を見たとします。この夢には、自由な子どもというイメージが表われていて、真面目な人が考えたこともなかった生き方が表現されています。1度の夢で劇的な変化が生まれるわけではありませんが、こうした夢のイメージに注目し続けることで、真面目に生きてきた人の中の「自由な子どもの心」が活性化されていき、次第に変化していき、生きやすくなっていくことがあるのです。
どんな人も自分らしさを表現できる
絵を描いてもらうこともあります。発達障害の子どもは、注意が続かないことがあるので、ゾウを描いている途中でキリンを描きだし、ゾウとキリンの合体した「ゾウキリン」を描くことがあります。社会では、注意が続かないことは「不適応」と見なされますが、イメージに良い悪いはありません。「ゾウキリン」はその子らしい豊かな表現なのです。イメージはこのように自分らしさを存分に表現できる方法でもあります。
このように、イメージからひとりひとりの心にアプローチする心理学は、様々な人の助けや支えになる可能性を秘めています。
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天理大学 人文学部 心理学科 准教授 高嶋 雄介 先生
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