言葉にならない何となくの「感じ」 自分の心と対話する心理療法

言葉を超えた心との対話
人の心には、言葉で表しやすい気持ちもあれば、言葉では表現できないモヤモヤした感情もあります。
「イメージ」を扱う心理療法では、言葉にならない心の声に耳を傾けていきます。絵を描いたり箱庭を作ったりすることで、自分でも気づかなかった心の一面に出会うことができるのです。
例えば「風景構成法」という風景を描く技法では、描かれた風景の印象、川の流れ方や人の様子などから、心理療法の受け手(クライエント)の心のあり方や状態を読みといていきます。ただし「こう描いたからこの人はこういう状態だ」という絶対的な答えはなく、一人ひとりのクライエントの背景を理解した上で意味を考えることが重要です。
自分の中の感覚にアクセスする
イメージを扱う心理療法は、「感覚」に作用する方法です。特に「箱庭療法」では、砂やミニチュアに触れることで懐かしさや心地よさといった感覚が呼び起こされます。
現代社会では客観性や論理性、効率性が重視されがちですが、心はすべてを言葉や数値で表せるものではありません。たとえ言語化されなくても、何となくの「感じ」という、曖昧で主観的な感覚を自分でつかむことに意味があるのです。作品から読み取れることももちろんありますが、箱庭を作る過程で自分でも気づかなかった思いに気づく、つまり箱庭を作る行為自体が自分と対峙(たいじ)するコミュニケーションになるというわけです。
何よりも信頼関係が大事
このような自分とのコミュニケーションは大事ですが、技法を問わず、心理療法ではセラピストとクライエントがどのような関係性を築いているかが大事です。いい信頼関係を築くことが、心理療法を進める土台となるのです。そういう意味で「関係性」は心理療法研究の中心的なテーマといえますが、目に見えない関係性は数値化することが非常に難しく、解明すべき課題の多いものです。両者の間で何が生じているのかを明らかにできれば、関係性が治療にどう作用しているかはもちろん、心理療法にどんな意味があるかも見えてくるでしょう。
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帝塚山学院大学総合心理学部 総合心理学科 講師千葉 友里香 先生
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