むし歯や歯周病の原因は細菌のバランスだった!
むし歯や歯周病の原因は?
むし歯や歯周病の原因は特定の細菌だと考えられてきましたが、最近の研究でそれだけではないことがわかってきました。人間の口の中には数百種類の細菌がいると言われています。有害な細菌が侵入してきたときにそれを排除するなど、ほとんどが生きるために必要な細菌です。この数多くの細菌のバランスが崩れると、むし歯や歯周病になりやすくなるというのが、新しい考え方です。実はこの口内にいる細菌の種類とそのバランスは、人によって違います。それが病気になりやすいか、そうでないかを決定します。ただ、この個人差が何によって生じるかはまだ明らかではありません。
遺伝子解析の発達
このような考え方を可能にしたのは、遺伝子解析です。遺伝子解析が導入される前は、唾液の中から特定の細菌を取り出して培養し、それがむし歯などの原因かどうかを判定していました。しかし、数百種類の細菌から原因となる細菌を特定することは簡単ではありません。また、実験の過程も複雑で、細菌の培養に失敗することも多く、評価に対する信頼性も高くありませんでした。ところが、遺伝子解析の発達で数百種類の細菌のバランスを容易に知ることができるようになり、その結果、健康な場合の細菌の組み合わせと不健康な場合の組み合わせの違いもわかってきました。
治療から予防へ
このような遺伝子診断が発達すれば、歯科医の役割も変わってくるでしょう。これまでは、むし歯などの治療が中心ですが、これからは病気にならないためのサポートが重要な役割になってきます。もし細菌のバランスが悪く、むし歯になりやすいとわかれば、むし歯を予防するためのアドバイスができます。また、遺伝的要因で改善が難しければ、頻繁に検査を受けるといった対策を勧められます。口腔の健康は口腔だけでなく、全身の健康とも関わっています。例えば、歯周病は糖尿病や心筋梗塞との関連が注目されています。口腔の健康の維持は、病気予防に大きな役割を果たすと考えられているのです。
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先生情報 / 大学情報
九州大学 歯学部 歯学科 口腔予防医学 教授 山下 喜久 先生
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