歯の治療だけではない、在宅医療で求められる歯科医の役割とは
少子高齢化で訪れる「病院医療」の限界
日本は世界の中でも急速に高齢化が進んでいます。厚生労働省によれば、2042年には65歳以上の人口が約3900万人となり、ピークを迎える試算が出ています。高齢者の人口が増えれば、必然的に医療機関を受診する患者数も増え、救急搬送を受ける急性期病院も対応すべき患者数が増加します。しかし、急性期病院は患者の状態が少しでも回復すれば、病床を次の患者のために空けておかなくてはなりません。「救急」の仕組みを安定的に回していくためには、患者が自宅で引き続き医療を受けることが可能な在宅医療の仕組みが必須です。これからの社会は、地域の医療機関や関係機関が一丸となって住民を支え、その人が最期の瞬間までなじみのある自宅や地域で生き切ることが可能な「地域包括ケアシステム」の構築が求められているのです。
在宅医療の現場で「栄養」と向き合う歯科医
在宅医療の現場において、実は歯科医も重要な役割を果たしています。歯科医が担うのは、歯の治療に限りません。例えば、終末期で口からの食事摂取が難しいと思われる患者の嚥下(えんげ)機能を評価し、患者の希望する「最後のひとくち」をサポートすることもあります。また、「食べることは生きること」といい、口からの食事は生きる喜びにつながっています。歯科医は、少量でもいかに食事を楽しみ、栄養を取ることができるかを臨床栄養の観点から考えて、支援していきます。生活の場に医療を構築していく在宅医療において、歯科医は欠くことのできない仕事を行っているといえます。
医療は「総合診療」が求められる時代へ
地域包括ケアシステムが社会のインフラ的な存在となるこれからの時代、医師や看護師に求められるのは、特定の臓器に詳しくなることだけではなく、体の全体を診て、多様な患者を診ることのできる「総合診療」の知識や経験です。歯科医も「栄養」をキーワードに、総合診療の一分野を担う存在へと大きく姿を変えるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
鶴見大学 歯学部 講師 菅 武雄 先生
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