今、天文学が熱い! 新しい望遠鏡が変えた惑星形成プロセスの研究
星たちはどうやって生まれるの?
宇宙の銀河には、主に水素やヘリウムのガスと1%程度のちり(固体物質)からなる「分子雲」があります。その密度の高い部分は「分子雲コア」と呼ばれ、星たちが誕生する場になっています。分子雲コアは太陽の100万倍くらいの大きさに広がっていますが、自分の重力によって凝集して徐々に小さくなり、中心に太陽のような「恒星」ができます。
分子雲コアはゆっくりと回転していますが、つぶれて小さくなるに従い、回転速度が速くなります。その遠心力と恒星の重力が釣り合うと、恒星の周囲を物質が回転し続ける「原始惑星系円盤」ができます。この円盤の中で微量な固体物質が衝突・合体を繰り返すことで、惑星が誕生します。
超高性能な望遠鏡が従来の説を揺るがす!
この遠心力も、銀河の磁場の影響で徐々に弱まります。この力のバランスを計算すると、円盤は100万年ほど維持されるため、惑星ができる時間も100万年くらいと考えられてきました。
しかし、2011年に観測を開始した超高性能な「アルマ望遠鏡」により、若い原始惑星系円盤の中に、物質が存在しないために暗く見える部分である「溝」が観測されました。この溝は、リング状のもの、ドーナツの穴のようなものがあり、これはその中に固体微粒子が集まった惑星があるという兆候です。そこで、もっと短い時間で惑星が生まれるのではないかと考えられるようになりました。
議論が続く誕生プロセス
このように従来の説と観測結果が異なることがわかったため、惑星形成のシミュレーションを分子雲コアの段階からやり直す研究が行われています。現段階では、原始惑星系円盤の中に「惑星のもと」のような固体物質の集まりを再現するところまで来ています。新しいシミュレーションでは、惑星が誕生する期間は1万年から10万年の間とも考えられています。
ただ、溝の中にまだ惑星は観測されておらず、星・惑星形成プロセスについては、天文学の研究者の間で熱い議論が交わされています。
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先生情報 / 大学情報
九州大学 理学部 地球惑星科学科 教授 町田 正博 先生
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