睡眠中に顎が暴走する? 歯ぎしりの仕組みを探る
歯ぎしりは不思議な現象
顎(あご)は普段、自らの動きを精密に制御しています。食べ物の固さに応じて力加減を調節したり、日常生活の中で歯を壊さないように噛む力を制御したりしているのです。しかし睡眠中、顎の運動が暴走してしまい、身体に負担を与えることがあります。この現象が歯ぎしりです。
一般的に、寝ているときは身体から力が抜けています。そうした状態にもかかわらず、歯ぎしりでは音が聞こえるほどの強い力で顎が動きます。研究によって、歯ぎしりをする人は成人の中でも約10%だとわかりました。しかし歯ぎしりをする人としない人の違いや、歯ぎしりが起こる原因はまだ解明されていません。
歯ぎしりの仕組みに迫る
歯ぎしりの仕組みを突き止めるために、睡眠中の顎の運動を観察する研究が行われています。すると歯ぎしりは浅いノンレム睡眠のときに発生することがわかってきました。特にノンレム睡眠後半の、レム睡眠に近いタイミングで歯ぎしりが頻繁に発生しています。ノンレム睡眠は本来ならば脳が休んでいる状態ですが、歯ぎしりをする前には脳波が活発になったり、心拍数が上がったりしていました。そのため歯ぎしりが起こるには脳のなんらかの活動が必要だと考えられます。
治療法を見つけるために
歯ぎしりは歯を異常にすり減らしたり、顎関節症のように痛みを引き起こしたりする可能性があるため、治療法も求められています。もし意図的に歯ぎしりを引き起こせるようになれば、その過程で原因因子がわかり、治療方法の開発につながるでしょう。脳内の特定の箇所に刺激を与えると、顎がぱくぱくとリズミカルに動きます。そこで実験動物で歯ぎしりを人工的に再現するための研究が始まりました。例えば、睡眠中の動物の脳に微少な電気刺激を与えて顎を動かす実験や、もともと歯ぎしりをする動物を対象にその頻度を上げようとする実験です。しかし脳には顎の運動に関係している部分が複数あるため、どの箇所が歯ぎしりの原因になっているのか、順に検証が必要です。
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大阪大学 歯学部 口腔生理学講座 教授 加藤 隆史 先生
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