より良いムシ歯治療の材料をめざして
一般的なムシ歯治療法
ムシ歯の治療では、まずムシ歯菌に侵された部分を削り取り、削った部分を人工物で埋めます。型を取って、後日、歯の代わりとなるものを被せることもありますが、比較的小さなムシ歯の場合は削った部分をその日のうちに詰めて修復することがほとんどです。この時に詰める材料として、現在は白いコンポジットレジンという強化プラスチックが広く普及しています。コンポジットレジンは、最初はペースト状であり、特殊な光を数秒当てると固まります。天然の歯の色と似ているために審美性が高く、治療期間が短いのがメリットですが、材料特有の問題があります。
詰め物が歯に影響する
コンポジットレジンはプラスチックの特性として、固まるとギュッと収縮します。歯を削った内側には詰める前に接着剤を塗ってあるため、コンポジットレジンの収縮で歯が引っ張られ、歯にヒビが入ってしまう可能性があるのです。また、口の中には絶えず唾液があるので、縮んだコンポジットレジンは次第に水分を吸収し膨らみ始めます。元の大きさを超えて大きく戻ってしまった時も、歯を外側に押して影響を及ぼしてしまいます。これらは詰める時のテクニックで影響を回避できますが、一方でどんな詰め方をしても問題のないような材料の開発研究が進められています。
新しい材料の開発へ
研究では、まずドーナツ型のガラスの容器を作製し、ガラスにわざと細かい亀裂を入れておきます。そのガラス容器内にコンポジットレジンを詰めて固めると、レジンが縮む力で周りのガラスは中心に引っ張られ、あらかじめ入れておいた亀裂が長くなります。どちらの方向にどれくらいの長さで亀裂が伸びたかを調べることで、収縮によってどれくらいの力が発生したかを測定できます。次に、矯正などで抜いた人の歯を使い、同様に実験をします。将来的には、収縮の影響がないだけでなく、接着剤がいらず、詰めた材料から周囲の歯にムシ歯を予防する効果を生むような材料をつくり出すことを目標に、研究が進められています。
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鶴見大学 歯学部 歯学科 教授 山本 雄嗣 先生
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