細胞外マトリックスによる再生医療の可能性

細胞外マトリックスによる再生医療の可能性

人体のタンパク質の3分の1はコラーゲン

コラーゲンは、人間をはじめとする動物の体内に多く含まれるタンパク質の一種です。よく知られているように、人間の身体を構成する要素は水が1番多く、次にタンパク質、脂肪、無機質という順になります。そして2番目に多いタンパク質の約3分の1をコラーゲンが占めています。
コラーゲンというと、サプリメントや化粧品を連想しがちですが、ヒトの皮膚や骨、筋肉、内臓などあらゆる組織に存在していて、身体をつくるために必須のものなのです。

がん検診が簡単にできるようになる

最近は医療分野でのコラーゲンの利用が広まっていて、がんの検出に役立てる研究も行われています。その研究とは、がん細胞が増殖する過程ではコラーゲンが分解されたり、新たにつくられたりしますが、そのコラーゲンのかけらを調べて、その人ががんであるかどうか診断しようというものです。さらに、従来コラーゲンのかけらは血液の成分から検出しますが、尿から検出するシステムの開発が進められています。このシステムが確立されたら人体に負担をかけずに、がんの早期発見ができるのではと期待されています。

失った指が再生した!?

再生医療の分野でもコラーゲンの利用は盛んで、人工皮膚など傷ついた身体の組織を再生させる生体材料として使われています。
少し専門的な話になりますが、細胞と細胞の間を埋めるような物質を「細胞外マトリックス」と言い、コラーゲンも細胞外マトリックスのひとつです。実はこの細胞外マトリックスは、将来的に大きな可能性を秘めています。
アメリカでは事故で失ってしまった指が再生したという報告があります。なんでも、傷口に細胞外マトリックスの粉をつけておいたら新しく生えてきたのだそうです。信じられないような話ですが、組織の基になる幹細胞が残っていたら再生するのかもしれません。ちなみにその粉は、豚の膀胱から取った細胞外マトリックスであり、コラーゲンがたっぷり含まれていると考えられます。

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先生情報 / 大学情報

工学院大学 先進工学部 生命化学科 教授 今村 保忠 先生

工学院大学 先進工学部 生命化学科 教授 今村 保忠 先生

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応用化学、生物工学

メッセージ

私自身、生物化学に興味をもったきっかけは偶然でした。大学時代、生物化学の講義が特に面白いわけではなかったのですが、担当の先生の講義の進め方がきっちりとされていて、これはどういうことなのかと思いながらずっと聞いていました。
偶然というのは結構重要なファクターだと思います。また、人生においては、いろいろな偶然が作用します。興味を持てるものが見つからなくても、あるきっかけで興味の対象ができたりします。偶然の出会いが必然に思える、そんな出会いを工学院大学で探してみてください。

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工学院大学は、2017年に創立130周年を迎えた、伝統のある大学です。2019年4月から、専門性を高めた知識を得られるように、先進工学部の「応用物理学科」と「機械理工学科」では各学科を2専攻に分け、きめ細かな学修ができる体制に変わりました。
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