クジャクの羽のキラキラした色をインクで出すには?
クジャクの羽の色の秘密
私たちが目にしている色は、実は2種類に分けることができます。1つは「色素色」で、トマトが赤いのもジーンズの色が青いのも色素の働きによるものです。もう1つが「構造色」で、シャボン玉の表面やCDの裏面のようにキラキラ光る色です。構造色の特性としては、素材そのものは色を持たないことです。「微細構造」と呼ばれる細かい構造に光が当たって反射したときに、特定の光だけが強調されキラキラ輝いてきれいな色に見えるのです。
自然界にも構造色を持っているものがあります。代表的なのは鮮やかなクジャクの羽です。しかし羽を拡大してみると、黒い粒がきれいに並んでいることがわかります。実はクジャクの羽には黒い粒が並んでいるだけなのですが、これに太陽の光が当たって反射し、鮮やかな色を発するのです。
構造色を人工的に作るには?
クジャクの羽の黒い粒の正体は「メラニン」です。人の髪の毛や日焼けした皮膚などに見られる物質です。メラニン自体は人工的に作製するのは困難ですが、最近、神経伝達物質であるドーパミンを重合して容易に作れる高分子「ポリドーパミン」が、メラニンと同じような性質を示すことがわかってきました。ポリドーパミンで微細構造を作れば、クジャクの羽のキラキラを再現した構造色が作れ、粒子配列の計算をしっかりすれば、狙った色を出すことができます。このように自然界での優れた機能をヒントに材料を生み出す「バイオミメティクス研究」が注目されています。
新しいインクや肌に優しい化粧品ができる!
構造色の特長として、色素色と違い、「構造が崩れない限り色あせしないこと」、また「虹色や単色のあざやかな発色があること」が挙げられます。これをインクに応用できれば、退色せずキラキラした美しい色の、これまでにない新しいインクが誕生するでしょう。化粧品への応用は、色の美しさはもちろんですが、従来の金属片を使ったラメと違い、生物の体内にもあるメラニンをまねた成分を使っているので肌に刺激が少ないというメリットも期待されます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
千葉大学 工学部 総合工学科 共生応用化学コース 准教授 桑折 道済 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
高分子化学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?