信号機がいらなくなる? 「自動運転システム」に高まる期待
自動運転システムに必要な制御の研究
世界各国で活発な研究開発が進められている自動車の「自動運転システム」を実現するには、まず、自動車自体の運動方程式を立て、その動きを制御するための方法を、数式を用いて考え、コンピュータでシミュレートしていくことが必要になります。自動車の動きを制御する際には、走る場所の地形や道路の状況、信号機の情報、周囲を走るほかの車の情報などを取り込むことが必要になります。
今までにない自動車の使い方が実現?
現時点での自動運転システムの課題としては、自動車の周囲の情報を取り込むためのセンサーが非常に高価なことや、日本では信号機の動作情報が警察に管理されているために自由に使えないこと、天候や路面のコンディションなど、制御に必要な周辺情報の複雑で不確かな事象の動きのモデル化が難しいことなどが挙げられます。
しかし、こうした自動運転システムが実用化されると、今までにない自動車の使い方が可能になると考えられています。例えば、交差点の信号でぎりぎり止まらなくてもすむような加減速をして走ることができるようになるので、最適な燃費で走れることで省エネルギーや環境対策に良い効果をもたらします。交通渋滞も起こりにくくなるでしょうし、もしかすると信号機自体が必要でなくなるような社会になるかもしれません。
社会の枠組みを大きく変える可能性
これからさらに高齢化社会が進行する日本では、自分で運転することが困難な高齢者でも移動に不自由しない自動運転システムは、非常に大きな需要があると考えられています。自動車の自動運転システムを実際に社会の中で利用できるようにするためには、法律の問題もありますが、現時点でもいくつかの地方自治体や企業、大学などが協力して、自動運転システムの実証実験の取り組みが続けられています。今の社会の枠組みを劇的に変える可能性を秘めた自動運転システムの研究には、大きな期待が寄せられているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
工学院大学 工学部 電気電子工学科 准教授 向井 正和 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
工学、制御工学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?