ゲル表面をデザイン! 生体材料工学から医療や生物学分野の現場へ
ハイドロゲルは表面が面白い!
ゼリーや寒天など身の回りにあるプルプルしたもの、これらはみんな「ハイドロゲル」です。ハイドロゲルは、水に溶ける高分子がお互いに連結(架橋)して3次元構造を作り、その内部に水を含んだ、柔軟性のある材料です。人間の体の中もゲルであると言えるため、ハイドロゲルは生体材料としての応用が期待されています。ハイドロゲルの大きな特徴は、ゲルの表面・界面を介して物質の行き来が可能な「開放系」材料であることです。物質が出入りすることでゲルの構造や物性はダイナミックに変化し、機能を提供します。
ゲル表面をデザインして機能性を評価
研究では、合成化学の手法でゲルの表面・界面をデザインして、生体材料に適した機能を持つゲルの条件を探ります。よい材料が出来上がると、実際のゲルの構造や物性を解析してその機能との関係を調べます。ゲルの表面の構造や物性の解析は、技術的な難しさなどからこれまであまり確立されていませんでした。そのため、ゲルの表面の接着性や粘弾性といった性質を正確に評価できるような解析装置の開発も進められています。
ゲル表面から医療や生物学研究の現場へ
ゲル表面を適切にデザインすることで、表面をネバネバさせ、接着性を増すことができます。このように作ったゲル表面は、皮膚に接着させて使用する医療用テープとして活用させることなどが期待できます。
また、デザインされたゲル表面は「人工細胞外マトリックス(ECM)」として活用することもできます。ECMとは細胞の外に存在する物質のことで、糖やタンパク質のハイドロゲルです。これまでECMは細胞と細胞の単なる「つなぎ」にすぎないと考えられていましたが、近年の研究により、例えば生物の発生段階ではECMのダイナミックな動きがみられるなど、生命現象を主体的に駆動している可能性があることがわかってきました。材料工学の視点からゲルであるECMを研究して、人工ECMの医療応用や生命現象の理解につなげようとしています。
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