脳波を利用して新しいシステムやサービスを開発する

脳波を利用して新しいシステムやサービスを開発する

人間の自立性と深い関係がある脳波

生物は、外界の刺激に反応することで生きているわけではありません。特に人間のような高等動物は、考えることで自発的に行動します。そのような生物の自立性に深く関与しているのが脳波です。脳波は生物の脳から検出される電気信号ですが、そこにはあるリズムがあります。α波やβ波という言葉を聞いたことがあるでしょう。これらは脳波の種類を示しますが、波長によって分類されています。脳波と人間の意識状態や脳の働きは相関関係があります。例えば、α波が出ているときは精神的に落ち着いた状態だといわれています。

θ波が検出されると学習効果が上がっている

記憶活動が活発に行われているときに検出される脳波もあります。前頭部に検出されるθ(シータ)波です。ある英語学習システムの効果を測定するために、脳波の出方を調べたところ、学習効果が上がっているときにはθ波が検出されました。また、まだ動物実験の段階ですが、θ波が出ているときは脳のシナプス同士がつながりやすくなります。そのために記憶が強化されると考えられています。この実験結果から、ある英語学習システムがその人に合っているかいないかを知ることができます。また、有効性の高い学習システムを作ることが可能になります。

さまざまな分野で脳波を応用することが可能

脳波を応用するアイデアは、ほかにもいろいろと考えられます。海外では、脳波がコンピュータゲームに利用されています。例えば、リラックスしたり集中したりすることでキャラクターを操作するのです。介護の分野では、車椅子のコントロールを脳波で行うことが試されています。将来的には車の運転を脳波で行うこともできるかもしれません。そのためには、脳波の分析をさらに正確に行うことが必要になるでしょう。また、現在は脳波を測定するには、多くの電極にゲル(コロイド溶液がゼリー状に固化したもの)を塗布して装着する必要がありますが、もっと簡単に測定できる装置の開発が進められています。

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九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授 夏目 季代久 先生

九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授 夏目 季代久 先生

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脳情報工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は高校生のとき、生物の自発性に興味を持ちました。生物はなぜ動きたいと思うのか、なぜ何かをしたいと思うのか、そのような哲学的な疑問を持ったので、理系コースにいましたが、文系・理系を問わずさまざまな本を読み、教養を身につけました。それが現在の研究に役立っています。高校時代はいろいろなことに興味を持って、いろいろな本を読み、さまざまな情報を取り入れてください。将来の糧になるように努力を続ければ、進路を決める場合にもきっと身につけたことが役に立つでしょう。

九州工業大学に関心を持ったあなたは

九州工業大学大学院生命体工学研究科は、北九州市若松区の北九州学術研究都市内に2001年に開学しました。生命体工学という新しい分野を創成し、生物の持つ、省資源、省エネルギー、環境調和、人間との親和性等の優れた構造や機能を解明し、それを工学的に実現し応用することのできる技術者や研究者の育成を目標としています。また、本研究科では様々なプロジェクトに取り組んでおり、ロボットによるサッカー競技会への参加やトマト収穫ロボット競技会の企画等を通じて、「自然とロボットのあり方」について研究を進めています。