わずか0.1%の遺伝子の差異が、その人の特徴を決める!
人間の一つの細胞のDNAを全部つなげると2m!
成人は約200種類、60兆個の細胞でできています。その一つの細胞の中には、DNA(遺伝子)の文字であるG、A、T、Cが約60億個あり、これがつながって二重らせん構造になっています。さらに、DNAは糸巻きのようにタンパク質に巻き付いて「クロマチン・染色体」になります。人間の体細胞には23対46本の染色体が含まれます。これらすべての染色体のDNAをつなげると約2mになり、人間の身長をも越える長さですが、それがわずか0.01mmほどの細胞の核の中に入っています。
DNAの配列だけでは説明できない遺伝現象
人間はみな、一個の受精卵からスタートし、その中のDNAがコピーされて細胞が分裂する、という過程を繰り返して、体ができあがっていきます。したがって、基本的にすべての細胞は同じDNA文字の並び(配列)を持っています。なぜ、心臓、肝臓、皮膚のようにさまざまな細胞になるのでしょうか。これは、遺伝子が必要なときに発現し、必要のないときには眠ったままでいるというように、遺伝子のオン・オフのパターンが細胞によって異なるからです。DNA配列だけでは決まらない遺伝現象は、「エピジェネティクス」(エピ=超える/ジェネティクス=遺伝学)と呼ばれ、現在、その仕組みは「クロマチン・染色体」に隠されている、と世界中で活発に研究されています。
DNAの0.1%の差異が体質や疾病傾向を決める
2003年にヒトゲノム(人間の全遺伝情報)の解読宣言がなされました。わかったことの一つは、どの人も99.9%は同じDNA配列を持っていますが、残り0.1%の差異が、お酒に強い/弱いなどの体質から、がんなどの病気の傾向にまでも関係しているということです。もちろん病気は、遺伝的要因だけではなく環境的要因も関係しますが、疾病傾向にはエピジェネティクスも関与すると考えられています。現在、研究が進められており、遺伝的要因の解明によって、がんなどの病気も治せるようになることが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
明星大学 理工学部 総合理工学科 教授 清水 光弘 先生
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