幅広い分野とコラボすることで、遺伝子研究はさらに発展する
淀君も愛でたミヤコグサ
ミヤコグサを知っていますか? 黄色い花を咲かせるマメ科の植物で、北は北海道から、南は沖縄まで日本中のあちこちで見られる雑草です。このミヤコグサは遺伝子の配列が明らかになっているため、マメ科の植物の研究に適し、モデル植物として使われます。背丈が低い多年草で、早く花が咲いて種がとりやすい点も研究にぴったりです。ミヤコグサの祖先は、中国の雲南省あたりから中央アジアに居たのですが、ヨーロッパへ伝わっていったものが西洋ミヤコグサへと進化し、日本にきたものがミヤコグサへと進化してきました。古くは淀君(秀吉の側室)が好んだ花と言われています。
連続的に分布するが例外もある
日本の野生ミヤコグサは各地に分布していますが、遺伝子を調べてみると、ほんの少しずつ異なっています。普通は、近隣の地域のものほど似ていて、例えば、近畿のミヤコグサは、地理的に近い中部や中国地方のものなどとほとんど同じになります。ところが、中には、山陰や北陸、北海道と、連続しない地域で非常に似たものが見つかります。人は通常、食べることもできないミヤコグサをわざわざ運んだりしませんから、荷物などに偶然くっついて運ばれたと考えられます。このようなミヤコグサの分布を調べることで、昔の人の動きや移動の経路がわかると期待されています。ミヤコグサは根粒菌という、窒素ガスを利用できる細菌と共存しており、この菌の移動も調べることができます。根粒菌は人に無害な細菌なので、安全に調べられるのです。伝播(でんぱ)の様子がわかると、インフルエンザなどの病原体などの感染ルートの予測に役立つかもしれません。
理系、文系の枠を越えて、研究を進める
ミヤコグサの遺伝子の分析など、ゲノム(細胞中のDNAの総体)の解析は進歩が早く、さまざまな研究に生かせるようになりました。遺伝子を歴史や文化、社会学などほかの分野の視点で見ることで、さらに実用的な技術や知識を得られるかもしれません。遺伝子研究はまだまだいろいろな可能性を秘めています。
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先生情報 / 大学情報
奈良女子大学 理学部 化学生物環境学科 教授 佐伯 和彦 先生
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