「植物のお医者さん」 病気の仕組みを解明し予防・治療に取り組む

「植物のお医者さん」 病気の仕組みを解明し予防・治療に取り組む

植物病理学とは?

「植物病理学」は、植物の病気に関する研究を行う学問です。病原菌である微生物は、なぜ植物の病気を引き起こすのか、その仕組みについて電子顕微鏡などを用いたミクロの世界から解き明かし、治療法や予防法を開発していきます。
一例として、イネの「いもち病」があります。この病気が広範囲に発生した水田では、収穫量が減少したり、品質が低下したりします。1993年、この病気が日本の米作に甚大な被害をもたらし、政府が外国産米の緊急輸入措置をとるなど、政治や経済にも大きな影響を及ぼしました。

自然界の微生物を用いて病気を防ぐ

「いもち病」の病原菌は、胞子となって風で運ばれ、葉の上にとりつきます。葉の上で発芽した胞子は、葉に侵入するための道具となる付着器を作り出し、葉の固い防壁を突き破ります。ちなみに、その際に付着器が発する圧力は8メガパスカル、なんと車のタイヤの空気圧に相当します。したがって、「いもち病」を防ぐには、病原菌を葉に付着させないことがポイントですが、一つひとつの胞子を退治していくことは、ほぼ不可能といえるでしょう。
そこで、考案されたのが、付着器をはがす酵素を出す微生物を自然界から探し出すというアプローチです。この微生物をイネにあらかじめ処理しておけば、たとえ菌が葉にたどり着いても、しがみつくことができなくなります。すでに、病気を防ぐ微生物はいくつか発見されており、現在はその微生物を葉の上に留まらせるための研究が進んでいます。

植物のお医者さんには幅広い知識が必要

植物の治療においては、植物や微生物だけでなく、植物治療にまつわる農薬や環境要因などが入り組んでおり、「植物のお医者さん」である植物病理学者には、細胞生物学、分子生物学、生化学などを幅広く網羅した知識が求められます。また、研究目的も「食の安全」「環境汚染の防止」「持続可能な農業の推進」など多岐にわたっており、幅広いフィールドでの貢献が期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神戸大学 農学部 生命機能科学科 応⽤機能⽣物学コース 准教授 池田 健一 先生

神戸大学 農学部 生命機能科学科 応⽤機能⽣物学コース 准教授 池田 健一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

植物病理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は植物病理学が専門で、病原菌がどのようにして植物に病気を起こすのかという興味で研究を行っています。植物の病気を理解するためには、植物自身のことも、病原菌である微生物についても詳しくなければなりません。さらに、病気を治療するための農薬のことなども学んでおく必要があります。
私は、高校の時、陸上部に所属していましたが、それに例えるならば、植物病理学は十種競技のような分野です。いろいろな興味に満ち溢れたあなたが、この分野に飛び込んできてくれることを期待しています。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神戸大学に関心を持ったあなたは

神戸大学は、国際都市神戸のもつ開放的な環境の中にあって、人間性・創造性・国際性・専門性を高める教育を行っています。
また、神戸大学では、人文・人間系、社会系、自然系、生命・医学系のいずれの学術分野においても世界トップレベルの学術研究を推進すると共に、世界に開かれた国際都市神戸に立地する大学として、 国際的で先端的な研究・教育の拠点になることを目指します。