健康をたもつ仕組み
生命現象のキーマテリアル
私たちヒトは、60兆個もの細胞から成り立っています。細胞には核があり、核には生命の設計図となる両親からの遺伝データが詰まっています。遺伝データのほとんどはタンパク質の設計図です。これらの設計図をベースに、2万種以上のタンパク質がつくられます。
私たちは、動物や植物のタンパク質を食べ、アミノ酸にまで分解し、それらをもう一度順番につなぎなおすことによって、その2万種以上のタンパク質をつくっています。それらのタンパク質によって細胞がつくられ、私たちの体ができているのです。
幾万もの役割がある
例えば、私たちは生きていくために、「代謝」と呼ばれる化学反応を休むことなく続けていかなくてはなりません。そうした生命現象を、促したり抑えたりするために欠かせないのが酵素です。消化酵素をはじめとして、その種類は膨大で、ほぼすべてがタンパク質からできています。
また、タンパク質の中にはトランスポーターと呼ばれる運び屋もいます。注目はABCトランスポーターと呼ばれる種類で、細胞を包む膜にいて、さまざまな物質を輸送しています。ヒトでは約50種類が確認されており、その中のひとつ、ABCA1というトランスポーターは、細胞の中の過剰なコレステロールを、細胞の外へ出す働きをしています。コレステロールは、人体のさまざまな材料として使われる大切な物質ですが、コレステロールを過剰に蓄積した細胞が血管に付着すると血液の流れるスペースが細くなり、動脈硬化になります。動脈硬化がひどくなると、血液がうまく流れなくなり、死に至ることもあります。
生物の営みは謎だらけ
私たちの体は膨大な数のタンパク質や脂質が本当にうまく組み合わさってできており、食べものや生活習慣、環境の変化に応じて、日々変化しています。体の健康をたもつ仕組みは、こうした毎日の食生活や生活習慣が大きな影響を及ぼすこともある大変デリケートなものです。生命は神秘の小宇宙です。その営みを解明するために、応用生命科学の挑戦は続きます。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 農学部 応用生命科学科 教授 植田 和光 先生
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