ロボットによる「人間支援」の実現をめざして

ロボットによる「人間支援」の実現をめざして

運動制御で二足歩行ロボットの安定性を強化

高齢社会と介護する人手不足にともない、介護・福祉現場でのロボットの使用が期待されています。そのなかでも人間に似た外見を持つという親近感から、二足歩行ロボットによる「人間支援」に注目が集まっています。ただし現状では二足歩行ロボットは倒れることも考えられ、安定性という意味ではまだ問題があります。そこで信頼性のある歩行運動、動作を実現する「モーションコントロール(運動制御)」の研究が進められています。

安定した歩行動作を可能にする視覚情報

人は目を閉じて片足で立つとふらつきます。これは足の裏の感覚だけではなく、視覚情報でその瞬間の環境をとらえ、姿勢の修正をはかっているからです。現在の二足歩行ロボットは、足の裏が地面から受ける力を測定する「力センサー」の情報をもとに歩いています。そこで考えられたのが、ロボットにも人間同様の視覚情報を与える「ロボットビジョン」というカメラの搭載です。安定して動いている状態なのかどうかを視覚情報からロボット自らが判断し、姿勢を修正していくという歩行の実現のためです。現状では歩幅も大きくはないですが、将来的には段差にも対応していけるような歩行動作も可能になるでしょう。

ロボット技術で車いすもさらに便利に進化

また、ロボット技術を電動車いすに活用するなど、新たな機能へのアプローチも進んでいます。モーターで、動かす力を軽減するパワーアシスト機能を備えた車いすは、既に市販されています。しかし今までは、利用者のこぐ力や介護する人の車いすを押す力を軽減するだけでした。そこで次のステップとして、段差などの障害を避ける、扉を開けやすい位置に誘導するといった、車いす利用者の利便性を追求した機能が検討されています。
このようにロボット技術は、使う人の行動に応じて動作を変えられたら非常に有用です。今後の研究では人間と協調し、周囲の環境に適応していくロボットの展開が重要なカギになるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

公立千歳科学技術大学 理工学部 電子光工学科 教授 小田 尚樹 先生

公立千歳科学技術大学 理工学部 電子光工学科 教授 小田 尚樹 先生

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ロボット工学

メッセージ

ロボット研究で面白いのは、広い知識と技術的スキルを求められることや、だんだんとロボットが賢く動ける範囲を広げることに成功していくことです。するとその先の、夢のある“ロボットの活躍する社会”に近づいていくわけです。私自身は小さいころからラジコンなどの動くものが好きでしたので、この分野に進んだのは自然な流れでした。高校生のあなたにも今、やりたいことがあると思います。それが社会でどのように生かせるのかをよく考え、大学という出発点に立ったときに目的意識を持ってその先へと進んでいってほしいです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

公立千歳科学技術大学に関心を持ったあなたは

公立大学へ移行した本学は「科技大」と呼ばれ、緑に囲まれた雄大なキャンパスに応用化学生物学科、電子光工学科、情報システム工学科の理工学部3学科の学生たちが学んでいます。理工学部では理工学を9つの領域に分類し、1年次に9つの分野を幅広く学び基礎を身につけて、2年次から選択した学科で専門的に学修するというように、より高度な学びへと進む着実なカリキュラムを組んでいます。ですから、エンジニアとしての即戦力が強みとなり、就職に強い大学としても一定の評価を受けております。