大型化する台風に備え、低コストで農作物を守る方法
生活に欠かせない農業用パイプハウス
野菜や果物の栽培に欠かせない農業用のパイプハウスは日本各地に設置されています。一般的にビニールハウスと呼ばれるこれらの施設ですが、近年の台風の大型化にともない倒壊する件数も増えてきました。国内におけるパイプハウスには50年以上の歴史があり、その設置に関する基準は30年ほど前に作られたものです。細かい仕様変更などはありますが、強度の基準に大きな変化はありません。しかし、地球環境の温暖化にともない台風の大型化が進む現在、この基準では対応しきれなくなってきているのです。
かつての常識は通用しない、大型化する台風
2018年9月に上陸した台風21号は、50メートル以上の最大風速を記録しました。それ以前の台風における最大風速は30メートル程度だったので、台風の大型化が進んでいることがわかります。大型化する台風からパイプハウスを守る対策として最も簡単な方法は、パイプの本数を増やして強度を高めることです。しかしそれではコストがかかってしまいます。パイプハウスにはアーチパイプと直管パイプという2種類のパイプが使われています。コンピュータによるシミュレーションで、それらのパイプの組み合わせを少し工夫するだけでも強度を上げられることが明らかになりました。
板を差し込むだけで、手軽に強度アップ
さらに、地面に刺したパイプの周囲に板を差し込むことでも強度が上がることが判明しました。これは土の把持(はじ)力を応用した手法です。把持力とはモノを押さえつける力のことで、土との接触面積が大きくなればなるほど把持力も上がります。つまり、接触面積の小さい細いパイプだけよりも、面積の大きい板を差し込むことで把持力を上げることができるのです。
現在、温室で作物を栽培する農家の8割がパイプハウスを使用しています。いかにコストをかけずにハウスの強度を上げるか、多方面から研究が進められています。
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大阪産業大学 工学部 機械工学科 教授 榎 真一 先生
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