競歩の世界記録を塗り替えるかもしれない履物型ロボット
長距離を楽に歩くために
年をとると、歩くのがおっくうになりがちです。だからといって歩かないと、老化が早く進みます。そこで楽に長距離を歩けるよう歩行を支援する「履物型」ロボットが考え出されました。その原理は、ローラースケートの応用です。ローラースケートは後ろ足を蹴り出して推進力を得て、前方に滑っていきます。これと同じように、歩くときも後ろ足で地面を蹴るタイミングでモータの力を加えて、より前に進むようにするのです。ただしローラースケートとまったく同じにしてしまうと、バランスを取るなどの技術を身につけなければなりません。そこで、高齢者でも簡単に使えるようにするため、ロボット工学の知見が応用されています。
人が歩く動作を解析する
そもそも「歩く」とは、どのような動きでしょうか。足にかかる重心に注目して考えるなら、片足支持から両足支持、さらに片足支持の繰り返しです。足を振る動きとその速さに注目するなら、後ろ足で地面を踏み出した後に加速し、その足が地面に着地する前には減速しています。そこで加速するとき、つまり後ろにある足で地面を蹴り出すときに、モータの力でアシストするのです。これで前に出る力がぐっと増し、普通に歩いていても、いつもよりも多く前に進むことができます。
重心位置と足の動きの変化はセンサで測定
モータを適切に動かすためには、「重心位置の変化」と「足の動きの変化」を掴むことが必要です。ここにロボット工学の知見が生かされています。この2つを正確に測るために圧力センサ、ジャイロセンサ、加速度センサと3つのセンサを使います。センサで計測した数値を元に、重心位置と足の動き具合を解析します。そしてベストのタイミングで、モータを動かし前へ進む力を補助するのです。バッテリーを小型化すると同時に、小型で強力なモータを開発し、普通の靴と見た目が変わらないような装置を開発できれば、高齢者が競歩の世界記録を塗り替えることも夢ではなくなるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 工学部 電気電子システム工学科 教授 田窪 朋仁 先生
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