化学工学で未来の技術を! 透析の改良から人工エラの開発まで
患者にやさしい透析治療
液体の分離精製などを扱う化学工学は工業に欠かせない学問です。この化学工学の技術を人工臓器などに応用する研究が行われています。
透析治療とは、血液を体から取り出して腎臓の代わりに機械できれいにして体に戻す治療法で、「脱血」用と「返血」用の2本の針を使う「ダブルニードル透析」が一般的です。これに対して、1本の針で行う「シングルニードル(SN)透析」は患者の負担を軽減できますが、血液の行き来を1本の針で行うため時間がかかるのが難点です。このSN透析の効率を上げる研究が進められており、血液の行き来を切り替えるタイミングや血液を送り返す圧力、回路の長さなどの調整で効率を改善できることがわかってきました。SN透析は、高齢者の透析や在宅での透析にもつながるものとして期待されています。
液体で呼吸ができる?
肺に液体を満たして呼吸する「液体換気法」を知っていますか。液体を吸い込むと溺れてしまうイメージがありますが、液体に酸素が十分に含まれていれば呼吸は可能で、動物実験でも実証されています。この液体換気法に最適な液体が模索されており、多くの酸素を取り込めるシリコーンオイルがその候補に挙がっています。液体換気法は、肺が炎症を起こしたときに炎症物質を洗い流す肺洗浄や、薬液に完全に漬かるような全身やけどの治療法などに役立てられると考えられます。
人間もエラを使って水中呼吸
人工エラとは海水から酸素を回収する装置で、これが実用化できれば酸素ボンベを背負わなくても水中での活動が可能になります。人工エラの仕組みは、まず海水にシリコーンオイルを接触させて酸素を回収し、その酸素を空気中に取り出して呼吸に使う二段階式が検討されています。現在の技術では人工エラの小型化は難しいため、従来の酸素ボンベと人工エラとのハイブリッドとして小型化することが考えられています。近い将来、人工エラをくわえるだけで潜水が可能になるかもしれません。
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