ただ細いだけじゃない、ナノファイバーの高機能
高分子化学を応用したナノテクノロジー
高分子とは、1万以上の分子によって構成される化合物のことで、さまざまな高分子の特性を研究する学問が、「高分子化学」と呼ばれるものです。現在、ナノメートル(10億分の1メートル)の大きさのものをつくるナノテクノロジーが、電池やコンピュータをはじめ、さまざまな分野で活用されていますが、高分子化学を応用したナノテクノロジーも進歩しています。その一つに、「ナノファイバー」が挙げられます。
ウイルスも除去するナノファイバーの力
ナノファイバーとは、その名の通り、ナノレベルの細さの繊維です。現在最も利用されているのは、風邪用マスクなどのフィルター部分です。極細のナノファイバーを織り込むことで、非常に微細な穴をつくり、ウイルスなどの病原体をもとらえることができます。しかし、マスクのフィルターは、ナノファイバーの構造のみを生かしたものであり、その可能性の一部に過ぎません。単に小さい、細いというだけではなく、ファイバーの中ではものが非常に速く流れるなど、今まで知られていなかった独自の特性を備えており、いろいろな材料の素材となる可能性を秘めています。
高機能の燃料電池をつくる
ナノファイバーの機能の中でも注目されているのは、現在脚光を浴びている燃料電池への応用です。燃料電池は、電解質膜をプロトン(水素イオン)が通ることによって発電できるのですが、電解質膜にナノファイバーを使用すると、効率のよいプロトンの供給が実現できます。また、自動車に燃料電池を使う場合は、-40度から+130度くらいまでの温度環境で、一定の性能を維持できなければ実用に耐えません。そんな高機能も、ナノファイバーの使用によって可能となるのです。
ほかにも、電気を流すことができるナノファイバーもあり、LSI(大規模集積回路)などの小型化に応じて、配線用に使うことも検討されています。このように、ナノファイバーはバイオテクノロジー、環境、エネルギーなど、多様な分野への応用が期待されているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 環境応用化学科 教授 川上 浩良 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
分子応用化学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?