多孔質アルミニウムが月探査機に活躍!?
月へ送る小型探査機の開発計画
現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、月に小型探査機を送る計画を進めています。SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)と呼ばれるこのプロジェクトの目的は、「降りたいところへ降りる」です。
従来のロケットは、平らであるなど、「降りやすい」場所を選んでいましたが、将来、月をはじめ、さまざまな惑星に宇宙船を送る時代が来ることを想定すると、どこにでも着陸できる探査機の開発は重要だからです。
「降りたいところに降りる」のは実は大変!
SLIM探査機の総重量は、打ち上げ時には約400kgですが、月面着陸時には燃料を消費しているので100kg程度になります。しかし月面には大気がないため、パラシュートを開いて落下速度を遅くすることができません。また、逆噴射して減速する方法も、砂を巻き上げ、機器類に悪影響を与えるため使えません。そこで、探査機の着陸脚に衝撃吸収材を装着する方法をとることになりました。
着陸脚は4本あります。月面上高さ3mから自由落下するので着陸速度は3m/秒です。重さ約100kgですから、着陸時の運動エネルギーは450ジュールとなります。1本の脚には112.5ジュールのエネルギーがかかる計算になりますが、足場が悪い場合に2脚で着陸することを想定して、1脚あたり225ジュールとしました。衝撃吸収材はこのエネルギーを吸収しなければなりません。
パンみたいな多孔質アルミニウム
衝撃を吸収する材料として、多孔質アルミニウムが注目されています。これは、小麦粉にイースト菌を入れて膨らませるパンのように、アルミニウムに発泡剤を入れて焼いて作る、スポンジのような材料です。材料工学では「ポーラス金属」と呼ばれる材料で、穴が細かく数が多いほど衝撃吸収力が高くなります。実験室では、落下試験を繰り返しながら、探査機の脚専用の多孔質アルミニウムの開発が行われています。
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