地域の観光を成功に導くための、「三本の矢」作戦とは?

地域の観光を成功に導くための、「三本の矢」作戦とは?

三本の矢を合わせると?

「観光地域学」とは、地域の自然や文化、産業などを新しい視点や切り口でとらえ直し、それらの観光やツーリズムへの活用を考える学問です。地域のもつ一つの要素だけでは、観光客を呼ぶことは難しく、いくつかの要素を組み合わせることで魅力のある土地にすることができます。三本の矢を合わせて強くする理論のように、1+1+1が3ではなく、4にも5にもなっていきます。
また、ある地域で成功したやり方を、ほかの地域にも応用することも可能です。例えば「ゆるキャラ」は地域の特徴を表し、アピールするものとして広がりました。しかし、ゆるキャラ単体で観光客を呼べるわけではなく、くまモンが名所でパフォーマンスをしたり、土産物とコラボしたりすることで観光資源として重要なものとなります。

プラスの要素を加えていく

要素を増やすことで成功した例もあります。箱根は従来温泉地、湯治場として有名な観光地でした。周囲にある登山鉄道やロープウェイ、芦ノ湖の遊覧船など周遊コースのフリーきっぷを売り出したところ、芦ノ湖の箱根駅伝のゴールや大涌谷の景観、彫刻の森美術館など、いろいろな観光スポットを楽しんでもらえるようになりました。
さらに、若い女性にアピールできるよう老舗のホテルやレストランが独自のスイーツを提供するようになりました。このように、プラスの要素を加えることで、幅広い年代がリッチな気分で観光を楽しめる「箱根ブランド」の確立に成功したといえます。

マイナスの要素もプラスに!

何も特徴のない地域だからといって観光客を呼ぶのを諦める必要もありません。群馬県川場村は温泉をもっていますが、過疎化や高齢化が進んだ寂れた地域でした。しかし、高齢者の存在を観光資源にするという発想の転換が図られました。高齢者が言い伝えや生活の知恵を語る「語り部の家」や昔遊びの道具や郷土料理を作る「つくり部の家」が建てられ、それらを地域の観光資源と組み合わせることで、観光客を呼ぶことに成功しました。マイナスをプラスに変える発想も大事なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 教授 菊地 俊夫 先生

東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 教授 菊地 俊夫 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

観光地域学、地域環境学

メッセージ

ツーリズムや観光を学ぶとき基礎となるのは「地理学」です。地理学というと高校までの勉強では山や川の名前、地域の産物の暗記が中心でしたが、大学で学ぶ地理学は地域がどのように成り立っているか、あるいはどういう形に成り立たせればよいのかを考え、地域のさまざまな仕組みを学びます。それは、「地」の「理(ことわり)」を「学」ぶことにもなります。
そしてそれらを利用して観光やツーリズムに役立てていくということが大学で地理学を勉強していくうえでの重要なポイントになっていくと思います。ぜひ一緒に学んでいきましょう!

先生への質問

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。