プラスチックのここがすごい! 構造のプチ変化で大変身

プラスチックのここがすごい! 構造のプチ変化で大変身

変幻自在のプラスチック

コンビニなどでもらえるレジ袋はポリエチレンというプラスチックです。雨が降っても、袋の中の商品がぬれることはありません。ところがポリエチレンの構成単位「C₂H₄」のHを1つOHに変えるだけで、水に溶ける高分子へと変化します。あるいはHを4つともFに変えると、フライパンのコーティングに使われるテトラフルオロエチレンになって、はっ水性を持つようになります。このようにプラスチックは構造の小さな変化で性質を大きく変えることができるのです。プラスチックをデザインしていろいろな性質を作り出す研究が行われています。

人工血管の材料をデザインする

トウモロコシのでんぷんを原料とする「ポリ乳酸」は人の体内で分解される生分解性高分子で、生体材料として期待されますが、硬くもろいといった欠点があります。そこでポリ乳酸と共重合してポリ乳酸を柔らかくするような、柔軟性のある生分解性高分子はないかと探索されました。その結果、「PDXO」という生分解性高分子とポリ乳酸を組み合わせたものは、柔軟性がある上に、血小板が付着しにくい性質を持つことがわかりました。体内に人工物を入れるとさまざまな細胞が表面に付着します。人工血管では付着した血小板から血栓ができてしまうことが課題であるため、PDXOとポリ乳酸の重合体は生体吸収性を示す抗血栓性材料として期待されます。
また共重合の並び方も工夫して、ある程度長さのあるPDXOとポリ乳酸を共重合することで、それぞれの性質を出しながら強度も持たせることに成功しました。

複雑な構造のプラスチックを合成

プラスチックのデザインには、合成技術の開発も必要です。一般的なひも状の合成高分子に対して、樹木状に枝分かれした「ハイパーブランチポリマー」と呼ばれる高分子は、これまで合成が容易ではありませんでした。このハイパーブランチポリマーについて、従来の合成法よりも簡単な方法が開発され、さらに改良が進められています。また、その応用の可能性についても同時進行で模索されています。

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先生情報 / 大学情報

秋田大学 総合環境理工学部 応用化学生物学科 教授 寺境 光俊 先生

秋田大学 総合環境理工学部 応用化学生物学科 教授 寺境 光俊 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

高分子材料学、高分子化学

メッセージ

最近、日常生活の中で「本当に地球温暖化が進んでいるな」と感じることが多くなりました。これを解決するには、科学技術の進歩が必要です。化学分野では、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の排出やプラスチックによる環境汚染など、たくさんの課題があります。また、化学は目立たないけれど、自動車産業や半導体産業などでも欠かせない重要な分野です。大学では基礎から応用までいろいろな化学分野で最先端の研究を行っています。「化学技術が地球を救う」、こんな志を持った人を育てたいと思っています。

先生への質問

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地球を舞台に活躍する資源スペシャリストを養成する「国際資源学部」、教育分野や地域社会における現場実践力を養う「教育文化学部」、地域医療の核となり人々の健康と福祉に貢献する「医学部」、独創的な発想と技術力を育む「理工学部」の四学部が連携し、地域に根ざし世界に発信する教育・研究拠点をめざしています。
四季の彩り豊かなキャンパスでは、日本全国そして世界各国から集った学生がそれぞれの目標に向かい、勉学や課外活動に打ち込んでいます。