環境中の放射性物質を測定する
福島原発事故後の現実
2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故によって、大量の放射性物質が環境中に放出されたことは、周知の事実です。ヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム90、超ウラン元素などの放射性物質が、アルファ線、ベータ線、ガンマ線の放射線を出しながら、環境中に存在しています。
セシウム137やストロンチウム90の半減期(放射線を出す能力が半分になる期間)は約30年です。被曝を心配する声もある一方、「影響はない」という意見もあります。まず必要なのは、環境中の放射性物質がどのように拡散してしまっているのかを、把握することです。
環境中の放射線量を測定する
ところが、放射性物質も放射線も、無味無臭で五感で感じ取ることはできません。特別の機器を使って測定するのですが、正確な測定は決して容易ではありません。
例えば、ガイガーミュラー計数管は、放射能(放射性物質が放射線を出す能力)を測ることができます。しかし、そこにどのような放射性物質が存在しているのかを測ることはできません。
放射性物質や放射線の種類を測定するには、高価な機器、技術、時間などが必要です。測定の機器や技術の画期的な進歩が待たれるところです。
放射性物質の動きを追う
原発事故からひと月後の放射性物質の飛散状況を測定したデータがあります。これによると、福島原発周辺と35km圏内では、一様に飛散していると考えられるもの(セシウム137など)、福島原発周辺が特に高いもの(ヨウ素131など)、逆に場所によっては遠いほうが福島原発周辺より高い数値となるもの(放射性銀Ag110mなど)があります。
放射性物質はその種類によって、環境中での動きが異なるのです。今後はこのような放射性物質が風雨や雨水の影響を受けてどのように移動していくのかがよくわかっていません。こうした事態は、人類がほとんど直面したことのない課題でもあります。そのため長期にわたる継続した測定が不可欠なのです。
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