コンピュータ将棋はプロの棋士に勝てるのか?

コンピュータ将棋はプロの棋士に勝てるのか?

独自の技術でトッププロ棋士に挑む!

将棋の世界で、これまでコンピュータ(人工知能)は女流王将や元棋士に勝利してきましたが、「一番強い人間」に勝つことができるのかが注目されています。人間のように相手の表情を読んで今後の展開を想像することのできないコンピュータが、いまやトッププロの棋士に対等の立場で挑戦を許されるほど強くなっています。その背景には、コンピュータ将棋の技術向上があります。相手が指しそうな手を先読みしてどの駒を動かすのが有利であるかを予測し、そして負けやすい局面の共通項を分析することにより事前にその手を避けるという技術です。

相手に勝てそうな手を選ぶ「形勢判断」

相手が指しそうな手を先読みする手法を「探索」、その中から勝てそうな手を選ぶことを「形勢判断」と言います。「相手が必ず自分と同じ判断をして、自分はミスをしない」という前提で、ある局面を考えたときに、「Minimax探索」では可能な指し手をすべて列挙し、指し手それぞれを数値化してその価値を評価します。現在のコンピュータには20手くらい先を読むことが可能ですが、この先読みする力を深くすれば深くするほど強くなることがわかっています。また過去の対局の手順の記録である「棋譜(きふ)」を学習する技術により、形勢判断はより適確になりました。

コンピュータ同士の対局で棋力向上

コンピュータが学ぶ棋譜も、それを指したのは人間なので、人の指す将棋にある何らかの特徴が学習対象です。現在の学習では、どの駒に注目するかのような、局面を分析するポイントの候補は人間がコンピュータに与えています。もし、その処理スピードが驚異的に速くなったとしても、このような概念をコンピュータが自力で学習するというのは現段階ではかなり難しいのです。しかしコンピュータ同士が対局を重ねることで、強くなっているという事実もあります。人の心を読んで指すのはまだまだ遠い先のことでしょうが、一方ではコンピュータの力だけで将棋が強くなることは可能だと言えるのです。

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東京大学 教養学部 学際科学科 准教授 金子 知適 先生

東京大学 教養学部 学際科学科 准教授 金子 知適 先生

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広域科学、文化学

メッセージ

私は子どものころから将棋に興味があり、大人向けの将棋の本を読んでいました。しかし時間をかけてがんばったわりには、あまり強くなりませんでした。その後、ほかに興味が移ったのですが、あとちょっとでできそうなことができないということに対して、どうしたらできるようになるのかを考えることが好きでした。そこで学習の仕方を組み込んでいくコンピュータプログラムに将棋を取り入れたところ、これが面白かったのです。難しくてなかなか思い通りにいかないことに取り組む面白さを、あなたにも知ってほしいです。

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。