美しい雪も時に命を奪う 雪崩災害や船舶事故を防ぐ雪と氷の研究
美しい雪が恐ろしい事故の原因に
スキー、スノーボードなど、雪はウィンタースポーツに欠かせません。見渡す限りの銀世界は美しいものですが、雪国ではこの雪が起こす雪崩が、人命や財産を奪うこともあります。また、北極や南極に近い海域を航行する漁船や貨物船では、波しぶきで船体や甲板に大きな氷が着き、甲板上の機器が使えなくなったり、バランスを崩して転覆したりする事故も起こります。
こうした災害や事故を減らすために、雪や氷の性質についての研究が続けられています。雪崩や着氷のメカニズムがわかれば、その予測や対策、啓発活動を行うこともできます。
雪崩が起こる仕組みの解明
雪崩にもいろいろなタイプがあります。いくつもの層になった積雪の間に「弱層」ができて起こるものを「表層雪崩」と言いますが、気象条件によって弱層の状態もさまざまです。例えば、積雪表面が昼間に暖められて昇華した水蒸気が、夜に再び凍ることでできる「表面霜」があります。微小なプレート状の結晶が積雪表面に無数の柱のように並んだ霜の上に、再び雪が降って埋まり、そこに横方向の力が加わると弱層が壊れて雪崩が起きるのです。また、弱層をつくりやすい性質の雪が降り積もって雪崩になることもあります。
こうした気象条件や雪の状態を知れば、雪崩の発生を予測できます。雪崩のメカニズムをウィンタースポーツを楽しむ若者に教えて、雪崩から身を守るための啓発教材も研究されています。
船の着氷について知る
船体着氷の研究も、船の事故防止に重要です。これまでに、南極観測船「しらせ」で極地を航行しながら、船首からの波しぶきの上がり方、船体や甲板への飛来のし方、凍り方、気象・海象条件との関連などに関するデータ収集が行われています。また、低温室内でしぶき着氷を再現して、MRIで氷の構造を調べる研究も進んでいます。
現在は、どのような条件で着氷が起きるかという指標づくりが行われています。完成すれば事前に対策が取ることができるようになり、漁業、運輸業の安全に貢献すると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
北海道教育大学 教育学部 教員養成課程(札幌校) 教授 尾関 俊浩 先生
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