放射性物質と放射線について正しく知る
大切なのは「正しく怖さを知る」こと
2011年3月の福島第一原子力発電所の事故によって、放射性物質による環境汚染、および放射線による人体への影響が問題になっています。私たちに必要なことは、この問題についての科学的な知識を持って、「正しく怖さを知る」ことです。つまり「必要以上に心配しない」とともに「必要な心配はきちんとする」という姿勢です。
そのために、放射線や放射性物質について、正確に理解することが大切です。
原子力発電で生成した放射性物質が放射線を出す
原子力発電とは、ウラン235という原子核に中性子を当てて分裂させ、そのときに出るエネルギーで水蒸気を発生させてタービンを回し、発電するものです。たった1gのウランで学校のプールの水をお湯にできるほど、このエネルギーは膨大です。
ウランの原子核が割れると、大小のカケラができます。このカケラは、ヨウ素131、セシウム134や137、ストロンチウム90など数10種類に及び、多くが不安定な原子核です。一般に放射性核種とか放射性同位体と呼びますが、これが放射性物質の正体です。放射性物質は不安定な状態にあるため、安定した状態になろうとして放射線を放出します。放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線などがあり、放射性物質の種類によって、放出される放射線の種類やエネルギーが違います。
放射性物質よ、どこへ行く
福島原発の事故後に、現場から遠く離れた場所の放射線量が上昇したのは、現場から発せられる放射線が直接届いたのではなく、爆発によって飛ばされた放射性物質が、風にのって空中を舞い、木々や屋根や地面に付着し、行く先々で放射線を出し続けているからなのです。
放射性物質が、放射線を出す能力(放射能)や期間には差があります。物質の放射能が半分になる期間を「半減期」と言いますが、ヨウ素131の半減期は8日、セシウム137やストロンチウム90の半減期は約30年あります。私たちは、放射性物質の動きと、それによる放射線の影響を、しっかりと見ていかなくてはいけません。
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