ダイナミックな物質循環に関わる土のミクロな世界

ダイナミックな物質循環に関わる土のミクロな世界

土ってふしぎ!?

土は、多くの素晴らしい機能をもっています。土の中は目で見えませんが、いろいろな大きさの土粒子から構成されています。粘土粒子は肥料などの養分を蓄えるだけでなく、例えば福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性セシウムを吸着するなどのはたらきもあります。その土のミクロな世界を常に物質が滞留・循環し、生態系が維持されます。

厄介な塩害に対応するには

土中の多くの物質は水と一緒に移動します。近年、農業分野におけるセンシング技術の発達は、土壌内の水分量や塩分量をリアルタイムで観測し、土壌の「見える化」に繋がります。
例えば、地震による津波で塩害を受けた農地では、水をまいて塩水を排水させることで除塩します。ただし、水をまきすぎて塩分濃度の高い地下水位が浅くなると、蒸発によって地下水にある塩分が地表に上がって2次的被害が生じます。そのため、与える水の量や土壌の排水性の改善により、農地の復旧を図ります。そのような問題の解決には、実測・予測に基づく水分移動の把握や水管理がとても大事です。

地下水や大気とつながる土壌

土中の有機物は、微生物により分解され、二酸化炭素となって大気に放出されます。土壌は大気ともつながっていて、気候変動とも大きく関わります。農地から大気中への温暖化ガスの排出量の削減にも、土壌の物質循環メカニズムを知ることで対策できます。
日本の土壌は、火山灰土が広く分布し、土粒子の集まった「団粒土」を形成し、水もち・水はけが良いです。農作業で使われる肥料や農薬は、土壌内にとどまったり、土壌水と地下水へ移動したりします。その移動解明やモデル化には多くの検討課題があります。その克服により、農業の効率化や環境負荷の軽減も期待できるでしょう。特に農地では、人の働きかけにより、健康な土の状態を保つことが求められているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

佐賀大学 農学部 生物資源科学科 食資源環境科学コース 准教授 徳本 家康 先生

佐賀大学 農学部 生物資源科学科 食資源環境科学コース 准教授 徳本 家康 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

土壌科学、土壌物理学、農地環境工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

土は、驚きと不思議に満ちています。見えているのは表面のみで、その下にはいくつもの層があり、土を介して水や多くの物質が循環しています。それを現地で調査し、研究室で予測モデルを立てて実験して再現するという具合に、私は農業や環境保全に関わる「実学」について研究を積み重ねています。
その理解には、高校まで学んだ「基礎学問」を研究手段として活用することが大事です。農業や環境保全に関わる「ワクワク&ドキドキ」が社会に役立つ研究です。興味がある人は、ぜひ一緒に研究を楽しみましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

佐賀大学に関心を持ったあなたは

佐賀大学は、教育・芸術地域デザイン・経済・医・理工・農の6学部からなる総合大学です。キャンパスは本庄地区と鍋島地区に分かれ、どちらも緑溢れるのどかな環境にありながら、九州の中心地である福岡へJRで約30分で行けるアクセスの良さです。本学は学生生活から就職活動、さらには就職後まで「面倒見の良い」教育を進め、卒業生が愛校心を持ち続ける教育を実践し、学生に選ばれる大学をめざしています。研究面においては、産官学共同研究を中心に、中央の大きな大学にも負けない特色ある研究テーマへの取組みを推進しています。