海産物を使った、環境にやさしいサプリメント
注目の有効成分・コンドロイチン硫酸
コンドロイチン硫酸をご存じですか? 最近は医薬品やサプリメントの成分として、耳にすることも多いと思います。これは動物の軟骨などに存在する、天然の硫酸化多糖です。水分子を多く吸収できるので、外からの圧力や衝撃に対して、クッションのような働きをすることで知られています。人間の体にどのように働きかけるのか、実はそのメカニズムについてはわからない部分が多いのですが、動物実験では関節炎などに効果があることが明らかになっています。一説には、吸収されることで働いているのではなく、体内を通り、腸の表面をなぞることで効果を上げている、とも言われています。
天然物と化学合成の両方に注目
コンドロイチン硫酸は、ウシやクジラの組織から抽出することが主流でしたが、最近では、サメの軟骨から取ることが多くなりました。年々、注目が高まる一方で、さらに多くの供給が求められています。有機合成化学の分野では、コンドロイチン硫酸を有機合成で作る研究をしています。そのプロセスで、この成分がイカやそのほかの魚の中にも多く存在することがわかりました。
コンドロイチン硫酸の研究は、1960年代には始まっていましたが、21世紀に入り、抽出や分析の技術が進歩したことで飛躍的に進みました。最近の研究ではイカの軟骨や魚の骨や皮などを破砕して、糖類を抽出し、コンドロイチン硫酸を取り出す方法があります。化学合成で作るとどうしても時間と費用がかかるのですが、天然物から取り出すというこの製造プロセスでは、複雑な化学合成などは必要ありません。さらに海産物の食べられない部分を有効利用することで、環境への負担を減らすことができます。これからは化学合成で作る方法と、天然物から作り出す方法と、総合的によい点を補い合いながら使うことが必要でしょう。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 農学部 生命環境農学科 農芸化学コース 教授 田村 純一 先生
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先生への質問
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