環境、健康、行動から社会問題を考える環境心理学とは

環境、健康、行動から社会問題を考える環境心理学とは

「環境」の意味は幅広い

環境とは、私たち人間の周りにあるあらゆる状況のことを指します。辞書で調べると、「人間や生物の周囲にあって、意識や行動の面でそれらと何らかの相互作用をおよぼし合うもの」とあるように、非常に幅広い意味を持っています。風土や気候、周辺地域、事情、立場や境遇、雰囲気などと言い換えることもできるのです。自然や物理的なもののほかに、文化や生活スタイルにつながるものも含まれています。

個人だけでなく、集団の動きを考える

環境心理学は、人間を中心にした環境と、意識や行動の相互作用を取りあつかう学問です。心理学のなかでも、人の行動や反応・心理的な状況を、例えば数値などの客観的なものさしで表す「行動学」の側面を特に強く持っています。
「行動」は英語で言うと、「behavior」ですが、環境心理学で言う行動とは、「movement」の概念も含んでいます。movementには動きや動作のほかに、政治的・社会的な運動、活動、動向、傾向などの意味があります。世の中のたくさんの人が、ある状況下で同じように行動すると、それが社会的な流れになります。環境心理学では、ある環境での個人の行動を見るだけでなく、集団としての動きも考えなければならないのです。

環境の変化から生まれる問題を考える

さらに環境心理学では、「健康」も重要なキーワードになります。健康とは、「肉体的、精神的、社会的に調和のとれたよい状態にあること」です。「環境」と「健康」にはどちらも社会的な意味合いが含まれていて、環境衛生(environmental health)という言葉にも見られるように、両者は切り離せない関係にあります。環境心理学では、ある意味、同義語と言ってもよいでしょう。
人間のさまざまな活動によって、環境は大きく変化を遂げています。そして人間は、その変化の影響を受けています。そこで生まれた問題を、「環境」「健康」「行動」の三方向から考えていくのが環境心理学の役割なのです。

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先生情報 / 大学情報

大阪大学 人間科学部 行動学科目 環境行動学分野 准教授 青野 正二 先生

大阪大学 人間科学部 行動学科目 環境行動学分野 准教授 青野 正二 先生

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環境心理学、心理学、行動学

メッセージ

私が大学生のときを振り返ると、自分の専門科目に関係のない講義は役に立たない、つまらないと思って受けていたことがありました。しかし、どの講義にも一つ二つ印象に残っている話があります。今、自分が担当する講義の準備をするとき、たくさんの資料を調べますが、ふと気が付くと当時の講義で聴いた話が役に立っています。大学は垣根を越えて、複数の学問領域がオーバーラップするところです。いろいろな学問が背景でつながりあっているので、敬遠せずに学びましょう。後で役に立つことがきっとあるはずですよ。

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