遺伝子組換えと化合物を使った栽培で食糧難を救え!
遺伝子組換え技術
作物の収量を増やすために、分子生物学の理論や遺伝子工学の技術が用いられています。特によく知られている方法が「遺伝子組換え」技術です。従来の「品種改良」では、異なる特徴をもつ作物を何度もかけ合わせる方法が一般的でしたが、21世紀に本格化した遺伝子組換え技術は、特定の特徴をもたらす遺伝子だけを組み込むことができます。これにより、例えば「味がよく、病気にも強い」作物が、かけ合わせより格段に正確に、早くつくることが可能になりました。また、異なる種別でのかけ合わせができる点も遺伝子組換えの特徴で、害虫に食べられないトウモロコシも開発されました。
化合物を使った栽培
作物の収量を増やすためのもう一つのアプローチが、「化合物」を使う方法です。植物を構成するタンパク質は特定の形をしていますが、高温や乾燥といった環境の変化からストレスを受けると、この形が壊れます。植物はそれを修復しようとするため、その分生育が抑制され、作物なら収量が減ることもあります。しかし、壊れたタンパク質の形を元に戻しやすくする化合物があり、それをあらかじめ与えることで、ストレスを受けてもタンパク質が修復しやすくなります。まだ研究段階ですが、この方法でストレスによる生育の低下が緩和されることが実験で証明されています。
まずは正しく知ることから
地球の人口急増が進むと、深刻な食糧難が危惧されます。遺伝子組換え技術や化合物を用いた栽培によって作物の収量が上がれば、食料危機だけでなく、エネルギー問題にも貢献することができるでしょう。一方で、特に日本では遺伝子組換え技術に対して慎重な意見が見られます。ただ、遺伝子組換え食品を直接口にすることはなくても、油の原料や畜産動物のエサなどにはたくさんの遺伝子組換え作物が使われており、すでに私たちはその恩恵を大いに受けています。今後の正しい使われ方を議論するうえでも、遺伝子組換え技術の仕組みや特徴を多くの人が知ることが不可欠であるといえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
関東学院大学 理工学部 生命科学コース 教授 近藤 陽一 先生
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遺伝子工学、分子生物学、植物分子生物学先生が目指すSDGs
先生への質問
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