学ぶ意欲の仕組みを知り、学びたくなる教育をデザインする
意欲の仕組みを知る
勉強しなきゃいけないけど意欲が出ないというのは、誰しも経験することでしょう。誰かから「勉強しなさい」と言われると、余計にやる気が失せることもあります。心理学の実験や調査の結果からも、人から強制されるより主体的な気持ちで学ぶ方が意欲的に取り組み続けられやすいことがわかっています。
授業で意欲を高める実験
アメリカの心理学者がある実験で、科学の授業中に、半分の人には単に学んだ内容だけをまとめてもらい、もう半分の人には学んだことが自分の生活の中で何に役立つかということも考えて書いてもらいました。すると、授業が終わった頃には、何に役立つかを考えた人たちの方が科学への興味を高く持ち、最終的に高い成績も取りやすい傾向が見られました。この方法は、科学の学習に自信がなく、あまり意欲を持つことができていなかった人たちの間で特に効果的でした。考えを整理し、自分で学ぶ価値を発見することで、興味が高まり、意欲的に学ぶことができるようになると考えられています。
学んでみようと思ってもらう工夫
学びの場は学校の授業だけとは限りません。例えば、公共施設では子ども向けの実験教室なども開かれています。こうした実験教室に参加すると学習意欲は高まりやすいのですが、そもそも参加する子どもの多くは学習意欲がもともと高い傾向にあります。科学に興味のない子どもにも実験教室に来てもらい、興味を持ってもらいたい、という場合には工夫が必要です。 工夫の例として、ショッピングモールで開かれた、スーパーボールすくいから始まる「水に濡れても破れないポイを作る」実験教室があります。ここには、従来の実験教室では参加してくれにくいような子どもたちも参加していました。遊びなどの好きなことをきっかけに、学ぶ意味を発見できる機会に恵まれれば、学んでみようという興味や意欲を持つことができるのです。
教育心理学や教育工学の研究では、心の仕組みを知ることで、誰もが学びたくなり、うまく学べるようにもなる教育のデザインを目指しています。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 人間科学部 教育学科目 教育工学分野 准教授 後藤 崇志 先生
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