人々の暮らしを支え、変えていく有機化学の可能性
私たちの社会に欠かせない有機化合物
私たちの日常生活において重要な役割を果たしている医薬品や化粧品、化学繊維、プラスチックなどは、主に「有機化合物」という物質によって作られています。有機化合物は、もともとは生物を構成している分子のことでしたが、現在では炭素を中心とした原子で構成された化合物全体を指します。有機化合物を使った製品の開発や製造には、有機化学の知識や考え方が欠かせません。
有機化学に秘められたさまざまな可能性
有機化合物は主に炭素、水素、酸素、窒素などで構成されていますが、その組み合わせ方の重要なパターンは十数種類ほどです。それぞれのパターンが持つ性質と反応性を理解すると、それらを組み合わせることによって、非常にユニークな機能や構造を持つ有機化合物を作りだしたり、生物に対してさまざまな作用を示す有機化合物を合成することが可能になります。
最近では、従来のプラスチックや医薬品のほかに、軽くて丈夫な炭素繊維素材や、スマートフォンのモニタなどに使われる有機ELディスプレイなど、今までにない利用価値をもたらす製品が、有機化合物の特性を利用して開発されています。また、コンピュータに用いられる半導体や太陽電池の素材などについても、有機化合物を利用することで高効率化や軽量化、コストダウンを図る研究が進められています。
有機化学の研究がもたらしたノーベル賞
機能的な新規有機化合物を作り出したり、それらを作るための新しい反応を開発したりといった研究は、世界各国で盛んに行われています。2010年に鈴木章先生や根岸英一先生がノーベル化学賞を受賞したのは、新しい有機化学反応についての研究が高く評価されたのがその理由でした。私たちの社会に今やなくてはならない存在となった有機化合物は、これからもさまざまな場面において、多彩な役割を担っていくことでしょう。
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